私が英語を学ぼうと思ったきっかけは、学生時代にアメリカの詩人エミリー・ディキンソンの詩集に感銘を受け、内容をもっと深く理解したいと思ったからでした。現在では、映画や書籍、音楽など、言語を楽しみながら学べる手段が身近にあり、語学学習がより一層充実したものとなっていますね。

 さて、今回紹介するのは「a trip down memory lane」です。

目次
「a trip down memory lane」の意味は?
「down memory lane」の由来は?
「Memory (記憶)」はどこに?
最後に|“Pondering while going down memory lane. ”〜思い出をたどりながら考える

「a trip down memory lane」の意味は?

「a trip down memory lane」を直訳すると、「trip」は(旅)、「memory」は(記憶)「lane」は(小径、細道)ですが……、そこから転じて

正解は……
「思い出をたどる、過去を懐かしむ」という意味になります。

『ランダムハウス英和辞典』(小学館)には、“down memory lane”の意味として「昔なつかしい、思い出をさぐる」と書かれています。

たとえば、

The class reunion was a trip down memory lane.
(同窓会は思い出をたどる旅となった。)

などのように使います。

特に、懐かしく幸せな思い出を話すときに使われる表現です。

「trip」の代わりに、

a walk (down a memory lane)
take a stroll (down memory lane)
go(down memory lane)

などと言い換えることもできます。

「down memory lane」の由来は?

この表現は、1924年に流行した『Memory Lane (思い出の小径)』(作詞:バド・デ・シルヴァ、作曲:ラリー・スピアー、コン・コンラッド)に由来があると言われています。その後、このフレーズは、1944年の喜劇映画『イン・ソサエティ』(バド・アボット、ルー・コステロ主演)にも登場しました。

また、元映画俳優であったロナルド・レーガン大統領が、1984年の共和党候補指名受諾演説で“Well, let’s take them on a little stroll down memory lane. ”(彼ら<対立候補>を思い出の小径に散歩させよう )と、このフレーズを使ったことから広く知られるようになったと言われています。

「Memory (記憶)」はどこに?

ダンサー、振付家であり、立教大学で教鞭をとる砂連尾理さんが、京都府舞鶴市の特別養護老人ホームからはじめた、「とつとつダンス」という取り組みがあります。「とつとつダンス」は、高齢者や認知症患者、障害を持つ人、介護職員、そして地域住民が共に作り上げるワークショップとダンス公演です。

小学館の『日本国語大辞典』によると、「とつとつ」とは「口ごもりながら話すさま」という意味。この意味の通り、「とつとつダンス」は、一般的なダンスのような振り付けがあったり、理想形を目指すものではありません。

写真/torindo

参加者は互いの呼吸を感じながら、ゆっくりと、時にためらいがちに体を動かしていきます。相手と共に動くことによって、高齢者、認知症の人、そして介護者たちが、共生していることを感じあおうとする実験的な場となっています。2009年にスタートした活動は、現在では国内のみならず、シンガポールやマレーシアなど海外にも展開しています。

言葉や記憶が伴わないコミュニケーションを通し、相手の動きや呼吸から、人と人とのつながりを見出そうとするこの試みは、静かな喜びが満ちているように感じました。

最後に|“Pondering while going down memory lane. ”(思い出をたどりながら考える)

私たちは時に、記憶に大きな信頼を寄せてしまうことがあります。たとえば、英語を話したい一心で、単語や文法を必死に覚えた経験がある方も多いでしょう。しかし、記憶はいつの間にか変化したり、薄れていくものでもあります。記憶に頼ることは必ずしも確かなものではないかもしれません。

記憶や言葉だけでは伝わりきれないコミュニケーションの可能性を模索する。それは、人と人とのつながりを育むための、あたたかな手がかりとなるのではないでしょうか。

●執筆/池上カノ

日々の暮らしやアートなどをトピックとして取り上げ、 対話やコンテンツに重点をおく英語学習を提案。『英語教室』主宰。  京都祇園にある建仁寺塔頭両足院をベースに、ひとつのテーマについて英語で語りあう『うごく哲学』を対面とオンラインで定期開催。その他、他言語を通して、それぞれが自分と出会っていく楽しさや喜びを体感できるワークショップやイベントを多数企画。

●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com

 

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