マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研(https://souken.shikigaku.jp)」が、ビジネスの最前線の用語や問題を解説するシリーズ。
昨今、生産性を高めるために、「メンバーシップ型からジョブ型へ組織を変えたい」と考える企業が増えてきています。そのためには、今まで人に紐づいていた業務を役職に紐づける必要があります。いわゆる「適材適所」から「適所適材」という思考へのシフトです。
しかし、闇雲に「適所適材」へと組織をシフトすると思わぬ落とし穴が待っています。
企業を成長させるための組織づくりに迷われている経営者、部下を持つ管理職・リーダー、人事担当者の方は、この記事を読むことで、
・成長する組織の作り方
・適材適所、適所適材の特色
・「適所適材」を正しく取り入れる方法
といったことをご理解いただけます。ぜひ、ご一読いただけますと幸いです。
「メンバーシップ型」と「ジョブ型」
過去日本の多くの企業は終身雇用、人材の長期育成を前提として「メンバーシップ型」の組織を運営することが一般的でしたが、終身雇用制度は、右肩上がりの経済成長を前提としているため、現代のように経済の先行きが不透明な状況下では、多くの人材を長く雇用することで人件費が増大する終身雇用の維持が困難であると考える企業も増えています。
組織の硬直化への懸念や、若手の優秀な人材を抜擢しにくいこともあり、企業が終身雇用制度から「ジョブ型」雇用へのシフトを目指す一因になっています。
「ジョブ型」では、職務内容(ジョブ)を定義し、職務記述書(ジョブディスクリプション)等で具体的に特定・明示し、その職務を遂行するにふさわしい人材を配置します。
個人が主体的に自身のキャリアを形成していくことが主流となった現代では、社員側からしても、職務が明確であるほうが、自身の持つ能力を生かしやすく、求めているキャリアを描きやすいと言えます。
「適材適所」とは?
メンバーシップ型では人に役割を与える「適材適所」の考え方が主でした。Aさんは話すのが得意なので営業の役割を、Bさんは傾聴が得意なのでカスタマーサポートの役割をといったように、社員の得意不得意や本人の希望なども踏まえて役割を与えるという手法です。社内の労働力が多分にあり、余剰を抱えても十分利益が出る状態であれば良いかもしれません。
しかし、社内に十分なリソースが割けず、余剰をかかえることができるだけの資本余力がない場合、人に役割を与える「適材適所」の考えでは、企業内に必要な役割を担う人がいないという状況になり得ます。もしくは、優秀な一部の社員に仕事が集中するといった属人的な組織となる可能性があります。
「適所適材」とは?
ジョブ型では先に述べたように、あらかじめ組織図上の役職に対して役割を定義し、その枠に人を後からはめるという「適所適材」の考えです。
経営者は組織の目的目標を達成するために必要な組織図を作成して、役職に対して役割を先に決めるため、配置された社員には役割を果たすという責任が与えられます。
先に枠を決めて後から人を当てはめるため、組織に必要な機能が空白にはなりませんが、与えられた役割を果たせず機能不全となることはあるため、社員はみな自身の役割を果たすために枠を埋める、成長していく必要性があります。
日本の企業では社員が法で守られているため、即時解雇とはなりません。そのため、機能しなければすぐに替える、解雇と採用によって枠を埋めることは困難です。よって、企業が社員を成長させるために、マネジメントが必要となります。
また、部下の育成が管理者自身の経験や知識に基づくマネジメントによって実行されている場合、「部下が育たないのは〇〇上司のやり方が良くない」といった、個人を責める形となります。結果、管理者を変えたとしても本質的な改善とはならず、あくまでその場しのぎの対応となります。
「適所」を埋めるために、メンバーは目標達成のためのスキルアップ、知識習得、アクション及び修正を行い、管理者は部下への目標設定、未達時の不足の明示、不足を埋めるための行動変化を部下に出させ、次の結果の約束を行うことで、「適材」に変わっていく必要があります。
「適材」を育てるマネジメント
組織上の役職に役割を定義し、先に枠を決めてから人を当てはめる「適所適材」の組織作りでは、必ずしも当てはめた人材が役割を十分に果たせるわけではないので、「適材」に変化させるためにマネジメントが必要となります。
そのためには、まず部下に求める役割を管理者が明確にすること。ゴールイメージが管理者と部下でズレている状態の場合、期限時の結果と設定したゴールの過不足が不明確となってしまうため、その後の修正に進めません。
管理者は期限と状態を設定して、できたできなかったの区分が可能なゴールを設定します。ここで注意しなければならないことが、管理者は明確にゴールを伝えたつもりでも、部下側の意識上は不明確となる場合があることです。
毎月予算達成しているAさんと未達が続くBさんに同じ予算目標を与えても、Bさんからすると、「達成のイメージがわかない……」となるケースがあります。その場合は、「5営業日時点の提案獲得数4件」のように、期限と状態を手前に設定して部下が明確にイメージできるように設定することが必要です。
次に期限到達時に未達の場合は、不足の明示は管理者が、不足を埋める行動変化は部下が考えることです。
部下に「なにが足りなかったのか?」と質問し、的が外れた回答が返ってくると、その後の改善の行動もズレてしまいます。また、その後の改善内容や行動を管理者が伝えてしまうと、部下は「言われたことを行なっているだけ」となり、成長しません。
そのため、不足を明確にすることは管理者、不足を埋めるための行動変化を考えるのは部下と役割を区分することを推奨します。
まとめ
この記事をまとめます。
・現代の日本企業では従来のメンバーシップ型からジョブ型雇用へシフトする企業が増えている。
・メンバーシップ型で見受けられる「適材適所」の組織では、組織に必要な機能を担える人材がいないという状態になる可能性がある。
・ジョブ型で見受けられる「適所適材」の組織では、適所を作るだけではなく、枠を埋めるための変化が責任者と部下互いに必要であり、適材となる必要がある。
・「適材」となるためのマネジメントが必要である。そのためには、管理者は部下へ期限と状態を設定し、不足を明確化すること。その経過は部下自身が考え行動すること。
組織作りや部下の育成に悩んでいる方は、ぜひ、この記事を参考にしてみてください。
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