関係が近いからこそ、実態が見えなくなる家族の問題。親は高齢化し、子や孫は成長して何らかの闇を抱えていく。愛憎が交差する関係だからこそ、核心が見えない。探偵・山村佳子は「ここ数年、肉親を対象とした調査が激増しています」と語る。この連載では、探偵調査でわかった「家族の真実」について、紹介していく。
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今回の依頼者は、直子さん(仮名・60歳)です。パート先のデパ地下の食品売り場でトップクラスの売り上げを持つ女性です。調査対象者は夫で、15年前に部下の女性と浮気し、同棲をしたことがあります。それを許せない直子さんは、今回の調査で浮気がわかったら、離婚すると決意している様子でした。
【調査までの経緯はその1で】
うつろな顔で昆布おにぎりを食べる
依頼者・直子さんの夫が出かけるのは必ず土曜日。同居する娘が「パパはいつも土曜日の昼頃に出かける」と言っていたので、都内の高級住宅地にある低層マンションの自宅前で10時から張り込み開始。
待つこと2時間、12時に夫が家から出てきました。すらりとした体型で筋肉質。女性にモテそうです。
まず行ったのはコンビニ。ここでおにぎりとお茶を買い、近くの公園で食べています。そこそこ風采がいい紳士が、うつろな顔をしてゆっくりおにぎりを食べながら、ハトの群れを見ている様子は、どこか物悲しいものがありました。
1時間くらい公園で時間をつぶすと、最寄り駅まで歩きます。電車に乗り何度も乗り換えて、都内でも辺鄙なエリアにある駅で下車。
まだ時間が早いのか、近くのテニスコートで学生がテニスをするところをボーッと見ています。直子さんの夫は、動いているモノがあるとそこに見入ってしまうところがあるようです。
14時30分になると、スマホのアラームが鳴り、そこから10分ほど歩いた豪邸に入っていきます。90年代に建てられたであろう古びたデザインで、表札には不思議な団体名が書かれている。検索してもサイトはありませんでした。
それから5分すると、タクシーが横付けされ、ハイヒールを履いて日傘をさした女性が出てきました。おそらくこれが、直子さんの義母でしょう。
それから30分くらいすると、タクシーが停まり、中から出てきた夫と義母が乗り、都心方面へ移動。私たちも後を追います。
【コーヒーを飲みながら夫と義母が話していたこととは……。次ページに続きます】