夫を突然亡くしたことにより、ワーキングマザーとして仕事と子育てを両立し、二人のお子さんを東大現役合格に導いた入江のぶこさん。その子育ての目標は「生き抜く力を持った“自立した人間”に育てること」ただひとつだったと言います。
自立した人間になるためには、自分で考える力や応用する力などの“人間力”が必要です。“人間力”は幼い頃から“考える訓練”を重ねることによって、少しずつ身に着くと考えていた入江さんは、子どもたちにたくさんの学びの機会を与えていました。
今回は、そんな入江のぶこさんの著書『自ら学ぶ子どもに育てる』(あさ出版)から、子供の成長につながる褒め方についてご紹介します。
具体的な意見を添え“学びの機会”を増やす
私は子どもたちを褒めて伸ばすことを心がけていましたから、とにかく子どもの良い面を見つけるようにしていました。子どもを愛し、集中して観察していれば、おのずと言葉は出てきます。
子どもが描いた絵が(親から見て)うまくなかったとしても、最後まで根気よく描きあげた子どもの集中力は褒めるに値すると思うのです。
「もっと上手に描けなかったの?」ではなく、「よく頑張ってここまで描いたね、偉いね」と、まず何よりも先に褒める。そのうえで、「ここをこうしたらもっと良くなるかもしれないね」と一緒に考えてみる。
何でもかんでも「ただ褒める」のではなく、一歩踏み込んだ意見を伝えることで、「お母さんは自分とちゃんと向き合ってくれているんだ」と子どもは理解します。
絵が上手に描けたならば、「すごいね~、上手だね。特にこのキラキラしてるお花のところが、お母さんは好きだな。これはどうしてキラキラさせたの?」といったように、なるべく具体的に感想を伝えるように意識する。
具体的な内容に踏み込むことなく「わ~、すごいね、上手だね」と抽象的に褒めることは簡単ですから、時間がないお母さんはついやってしまうかもしれません。しかし、それを続けていると、子どもの目にも“お母さん=何をやっても褒める人”と映ってしまいかねません。
もちろん、まったく褒めない親よりも断然良いですし、子どもも自信がつくとは思いますが、“学びの機会”としての効果は薄くなる気がするのです。
怒るにしても褒めるにしても、具体的に「何が悪いのか・何が良いのか」を示すことが、子どもの成長につながるのではないかと私は思います。
子どもに合った褒め方で、たくさん褒める
ただし、ひとつだけ気をつけないといけないのは、具体的な感想を子どもに伝える際の“伝え方”です。
自分としては「思ったまま」を伝えているつもりでも、子どもにとっては「母から発せられた、自分に対する批判」としてネガティブに聞こえてしまう場合もあります。過度に攻撃的にならないように、過度に自分の意見を押しつけないように配慮しながら、慎重に伝える必要があるでしょう。
また、お子さんのタイプによっては、ただ褒めたほうがいい場合もあります。
じっくりと思考するのではなく、そのときそのときの感情を優先するようなお子さんであれば、「お母さんに褒められた」という事実が重要であって、「どこが良かったのか」はまた別の話だからです。
反対に、じっくりと思考するようなお子さんであれば、「お母さんに褒められた」という事実とは別に、「自分の描いた絵は、こういうふうに受け止められるんだな」と、自分以外の人から発せられた客観的な意見に興味を示すでしょう──そこにはもちろん、「お母さんは適当なことを言わず、いつも真剣に向き合ってくれる」という信頼があることが前提です。
いずれにせよ、お子さんの性格や特性を注意深く観察しながら、それぞれに合う“褒め方”で、たくさんお子さんを褒めていただきたいのです。
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『自ら学ぶ子どもに育てる』(入江のぶこ 著)
あさ出版
入江のぶこ(いりえ・のぶこ)
1962年、東京都新宿区生まれ。幼稚園から大学まで成城学園で教育を受ける。大学生時代にフジテレビ「FNNスピーク」でお天気お姉さんを務める。卒業後、フジテレビ報道記者の入江敏彦氏と結婚。カイロ支局長となった入江氏と長男と共にカイロへ移住。イスラエルで次男出産。1994年12月ルワンダ難民取材のためにチャーターした小型飛行機が墜落し、乗っていた入江氏が死亡。帰国後、フジテレビに就職。バラエティ制作、フジテレビキッズなどに所属し、主に子育てや子どもに関するコンテンツの企画やプロデュースをする。女性管理職としてマネジメントも行なう。2017年7月に退職。2017年7月、東京都議会議員選挙に出馬、港区でトップ当選を果たす(35,263票獲得)。子ども2人は東大を卒業し、社会人となっている。長男の入江哲朗氏は東京大学大学院総合文化研究科を修了し博士(学術)の学位を取得。アメリカ思想史の研究者であり、映画批評家としても知られる。次男の入江聖志氏は、東京大学教養学部を卒業し、民放テレビ局社員。著書に『「賢い子」は料理で育てる』(あさ出版)がある。