夫を突然亡くしたことにより、ワーキングマザーとして仕事と子育てを両立し、二人のお子さんを東大現役合格に導いた入江のぶこさん。その子育ての目標は「生き抜く力を持った“自立した人間”に育てること」ただひとつだったと言います。

自立した人間になるためには、自分で考える力や応用する力などの“人間力”が必要です。“人間力”は幼い頃から“考える訓練”を重ねることによって、少しずつ身に着くと考えていた入江さんは、子どもたちにたくさんの学びの機会を与えていました。

今回は、そんな入江のぶこさんの著書『自ら学ぶ子どもに育てる』から、今でも続けているという年頭の決意表明発表についてご紹介します。

クリスマスなどのイベントごとを大事にする

幼い頃に父親を亡くした子どもたちには、クリスマスや誕生日といったイベントを家族みんなでお祝いした思い出がありません。だからこそ、仕事がどんなに忙しくても、クリスマスやお誕生日、お正月、端午の節句といったイベントは大事にして、全部きちんとやってあげたいと思っていました。

クリスマスには必ずツリーを飾り、“サンタさんからのプレゼント”を用意する。私にとっても楽しい思い出ですが、一度だけ、長男が希望していたプレゼントを用意できなかったことがありました。

あまりに仕事が忙しく、クリスマスのギリギリにプレゼントを買いに行ったところ……何と売り切れ! 人気の商品だったのでしょう。仕方なく「哲朗くんへのプレゼントは手配済みだけど、届くのに時間がかかっているからちょっと待ってね」と“サンタさんからの手紙”を枕元に残しました。

息子は素直に受け入れてくれましたが、いま振り返ると「もっと早くから準備をしておけば良かった」と思います。

二人が大人になったいまでも、クリスマスやお誕生日にはみんなで集まり、プレゼントを贈り合うことを習慣としています。

私たち三人は夫、父親を早い時期に亡くしているので、ある種の寂しさや暗さがベースにあると思うのです。子どもたちもキャッキャとはしゃぐようなタイプではなかったですし、私を含め、三人ともどちらかというと寡黙なため、普段から必要以上に喋ることもありません。

ですが、そうやって集まったときにはやはり──会話は少ないものの──同じ悲しみを背負ったもの同士、固い絆で結ばれていることをひしひしと感じます。

そうやって一年に何度かプレゼントを贈り合う機会があるのは、私たち家族にとって重要なことなのかもしれません。

“年頭の決意表明”はいまでも大事なセレモニー

そんな私たち家族のなかで、いまでも続いている大切なセレモニーが“年頭の決意表明”です。

お正月に家族揃って年頭の挨拶をし、一人ひとり順番に一年の抱負を発表する。子どもたちが幼い頃から続けてきたセレモニーですが、次男は「ちゃんとしたことを言わないといけない」と、いつも緊張していたそうです。

しかし私は、何も「子どもたちに、立派な抱負を打ち立ててほしい」と思っていたわけではありません。年に一度、「自分はどうやって生きていくつもりなのか。何を成し遂げたいと思っているのか」を自分の言葉で発表することで、自分の生き方を本人に自覚させたかっただけなのです。

「元気に過ごします」とか「今年は受験があるからしっかり頑張ります」とか、当たり前のことでもあえて子どもの口から言わせる。それに対して「期待しています」、「絶対に成功するから、頑張ってください」とエールを送り、私自身も抱負を語る。その一連が、家族にとっての大事なイニシエーションとなるのです。

ちなみに今年(※)もこのセレモニーは行ないました。

長男は一月下旬に出版された著書『火星の旅人 ―パーシヴァル・ローエルと世紀転換期アメリカ思想史―』が「売れるように頑張る」。

次男は家を出て一人暮らしを始めるので「生活を頑張る」。私は年齢と忙しさから体調を崩すことが増えてきたので「健康管理をしっかり行なう」と、それぞれ宣言しました。

(※)発行年の2020年

* * *

『自ら学ぶ子どもに育てる』(入江のぶこ 著)
あさ出版

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入江のぶこ(いりえ・のぶこ)
1962年、東京都新宿区生まれ。幼稚園から大学まで成城学園で教育を受ける。大学生時代にフジテレビ「FNNスピーク」でお天気お姉さんを務める。卒業後、フジテレビ報道記者の入江敏彦氏と結婚。カイロ支局長となった入江氏と長男と共にカイロへ移住。イスラエルで次男出産。1994年12月ルワンダ難民取材のためにチャーターした小型飛行機が墜落し、乗っていた入江氏が死亡。帰国後、フジテレビに就職。バラエティ制作、フジテレビキッズなどに所属し、主に子育てや子どもに関するコンテンツの企画やプロデュースをする。女性管理職としてマネジメントも行なう。2017年7月に退職。2017年7月、東京都議会議員選挙に出馬、港区でトップ当選を果たす(35,263票獲得)。子ども2人は東大を卒業し、社会人となっている。長男の入江哲朗氏は東京大学大学院総合文化研究科を修了し博士(学術)の学位を取得。アメリカ思想史の研究者であり、映画批評家としても知られる。次男の入江聖志氏は、東京大学教養学部を卒業し、民放テレビ局社員。著書に『「賢い子」は料理で育てる』(あさ出版)がある。

 

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