実にありがたいことに、人生をやり直せる時代になりました。人生百年時代となった今では、定年退職は、第二の人生のスタートのようにいわれています。
溢れる情報に惑わされず、巧妙で狡猾な罠を見破り、第二の人生を生きたいもの。しかし、自分だけの知識や経験だけでは心許ないところもあります。ならば、賢者の知恵を頼みとするのも一つの方法ではないでしょうか。
そうした賢者が残した一つの言葉をご紹介します。第32回の座右の銘にしたい言葉は「徹頭徹尾(てっとうてつび)」 です。
目次
「徹頭徹尾」の意味
「徹頭徹尾」の由来
「徹頭徹尾」を座右の銘としてスピーチするなら
最後に
「徹頭徹尾」の意味
「徹頭徹尾」について、『⼩学館デジタル⼤辞泉』では、「最初から最後まで。あくまでも。終始」とあります。文字通り、「頭から尾まで」、つまり「初めから終わりまで」という意味です。物事を中途半端に終わらせず、しっかりと最後までやり抜く姿勢を表す言葉です。
シニア世代にとっては、これまでの人生経験や今後の目標達成において、非常に共感しやすい言葉です。
「徹頭徹尾」の由来
この言葉の由来は中国の書物で、朱子学を構築した朱子が弟子たちと交わした言葉をまとめた『朱子語類』にある言葉だといわれています。構成としては、「頭尾を徹す」という句を四字熟語として強調した言葉で、頭から尾まで貫くことを意味します。日本の文学作品の中にも、
夏目漱石の『坊ちゃん』に、
野だの云う事は言語はあるが意味がない、漢語をのべつに陳列するぎりで訳がわからない。分かったのは徹頭徹尾賛成致しますと云う言葉だけだ。
夏目漱石『坊ちゃん』
という表記があったり、中野重治の『むらぎも』には、
「労働者の生活ってものが、徹頭徹尾わからないんだよ。」
中野重治『むらぎも』(講談社)
という表記があったりします。
「徹頭徹尾」を座右の銘としてスピーチするなら
「徹頭徹尾」を座右の銘にしてスピーチをするとしたら、人生経験を振り返りながら、この言葉を自らの人生に重ね合わせ、どんな局面でも一貫性を持って歩んできた自分を誇りに思う内容が考えられます。
仕事の成功や家族との関係、趣味に至るまで、すべてにおいて「徹頭徹尾」を貫いた実体験を織り交ぜながら話すと、感動を呼ぶスピーチになるでしょう。以下に「徹頭徹尾」を取り入れたスピーチの例をあげます。
一貫性を持つことの大切さを語るスピーチ例
皆さん、私はこれまでの人生において「徹頭徹尾」という言葉を大切にしてきました。この言葉は、最初から最後まで一貫して物事に取り組む姿勢を意味します。仕事でも、家庭でも、趣味でも、この精神を貫くことで、大きな成果を得ることができました。
例えば、私が30代の頃、会社で非常に困難なプロジェクトを任されたことがありました。途中で何度も挫折しそうになりましたが、「徹頭徹尾」の精神で最後まで諦めず、チーム全員と共にゴールを目指しました。その結果、プロジェクトは成功し、会社の業績向上に大きく貢献しました。この経験から、どんなに困難な状況でも、一貫した努力が大切だということを強く実感しました。
また、家庭では、子育てにおいても「徹頭徹尾」の姿勢を貫いてきました。子どもたちには、途中で諦めずに最後までやり遂げる大切さを伝えてきました。今では、彼らも自分たちの目標に向かって努力を続ける姿勢を持つようになり、その成長を誇りに思います。
「徹頭徹尾」の精神は、人生における大切な価値観です。これからも、この座右の銘を胸に、一貫した努力を続けていきたいと思います。皆さんもぜひ、この言葉を日常に取り入れてみてください。
最後に
「徹頭徹尾」の精神を座右の銘に取り入れることで、人生のあらゆる場面で一貫した姿勢を持つことができ、周囲にいい影響を与えることができます。人生の新たなステージでもしっかりと目標に向かって進む力が湧き、日々の充実感が増していくことは間違いありません。読者の皆さんも、ぜひこの言葉を座右の銘に取り入れて、日々の生活や新たな挑戦に役立ててみてください。
●執筆/武田さゆり
国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。
●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com