マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研(https://souken.shikigaku.jp)」が、ビジネスの最前線の問題を解説するシリーズ。今回は、社員の育成方法についての考察です。

はじめに

ビジネスの現場で、「指示待ち社員」という言葉は非常に多く耳にすると思います。指示待ち社員とは、上司からの具体的な指示がなければ動けず、主体性や自主性に欠ける社員のことを指します。このような社員が多いと、企業の成長が停滞し、競争力を失う恐れがあります。一方で、自分で考え、行動できる社員が多い組織は、変化に強く、イノベーションを生み出しやすい環境が整います。

本記事では、指示待ち社員を生み出さず、自分で考える社員を育てるための具体的な方法について考察します。

指示待ち社員の問題点

指示待ち社員が増えると、組織には以下のような問題が生じます。

1.生産性の低下

指示待ち社員は、上司からの指示を待っている間、時間を浪費しがちです。これは、組織全体の生産性を低下させる要因となります。自分で考え、次に何をすべきかを判断できる社員が少ないと、組織全体がスピード感を失い、市場の変化に迅速に対応できなくなります。

2.創造性の欠如

指示待ち社員は、与えられたタスクをこなすことのみに集中しがちで、新しいアイデアや革新的な解決策を生み出す余裕がありません。その結果、組織は創造性を欠き、競争力を失う可能性があります。

3.上司への負担増

指示待ち社員が多い場合、上司は部下一人一人に詳細な指示を出さなければならず、業務負担が増加します。上司が本来の業務に集中できなくなり、管理職としての役割が効果的に果たせなくなるリスクもあります。

自分で考える社員を育てるためのアプローチ

では、どうすれば自分で考え、行動できる社員を育てることができるのでしょうか。以下に具体的なアプローチを解説します。

1.前提条件となる役割の確認

まず、そもそも論になりますが、社員(社会人)としての前提条件となる役割認識を上司-部下の間で一致させることが重要です。もし、その社員に「上司からの指示をただ実行するだけ」の仕事を要求しているのであればそのままで問題ありませんが、主体的に考え、業務に取り組むことを要求するのであれば、「あなたは会社、または上司から与えられる役割を理解した上で、その責任を果たすために自ら考え実行する存在である」というそもそもの役割定義を整えなければなりません。

当たり前のように聞こえますが、これは非常に重要なことです。起業家やリーダーになるような人は当然のように自ら考え、道を切り拓いてきた結果、今のポジションまで上りつめてきているでしょう。しかし、その当たり前は全ての人にとっての当たり前ではありません。自らの仕事は「会社や上司から与えられた業務を遂行すること」だと認識している人も存在するのです。人は一人一人異なる考え方を持っていることから、上司である自分の当たり前の考え方を部下も持っていると思わず、この前提から確認することが大切になります。

2.考えるべき枠の設定

その上で、部下に求める達成すべき状態を業務の役割として明確に設定します。今、「あなたの部下は上司であるあなたの求める役割を100%理解しているでしょうか?」と問われたら、自信を持って「自分の部下は自分の求める役割を完全にわかっている」と答えることができるでしょうか? 仮にそうではない場合、注意が必要です。

部下に自ら考えてほしいからと言って、求める役割を明確に設定できていなければ、部下は何について主体的に考えればいいかも分からない状態になり、思考停止に陥ります。また、一方で役割が不明確な状態で部下が自分で考え、良かれと思って実行したことが上司であるあなたの求めることに反しており、評価がもらえなかったり、指摘をされたりしたら、その時点で主体的に取り組もうとする意識は希薄化するでしょう。

よって、どの部分について主体的に考えてもらいたいのかの枠を明確に設定する必要があるのです。どこまでを上司側である自分が枠として定め、どの範囲を部下側に考えてもらいたいのか。これを明確にすることは上司である自分の責任であることを認識しなければなりません。

3.目標設定の高さのコントロール

続いてのポイントは目標設定です。こちらも役割の設定と同様に「明確さ」は重要な要素の一つとなりますが、ただ明確であればいいというものでもありません。

例えば、営業部に配属されたばかりの社員で、まだ営業活動を行ったことのないメンバーに対し「目標は1か月で1000万円の売上です」と明確な数値設定をしたところで、達成のイメージが湧くでしょうか? もちろん、優秀な社員であれば問題ないでしょう。しかし、目標達成への道筋のイメージが湧かないのであれば(具体的なイメージを抱かせることができないのであれば)、それは目標として機能しません。

目標とは「今この瞬間の行動を導き出すための目視できる標(しるし)」でなければなりません。もちろん、低すぎる目標も部下の能力に蓋をすることになります。よって今の部下の状態、または能力に合わせた適切な目標をその都度見直すことが必要になるでしょう。

4.目標管理のスキル

部下が達成をイメージできる目標が設定できたら、最後の鍵は目標に向かう過程で行っていく目標管理によるマネジメントです。上司のこのスキルが部下の主体性を育む上で最重要になると言っても過言ではないでしょう。

そのポイントとは「経過(プロセス)に可能な限り口を出さない」です。上司になる人は、プレーヤーとしてある一定の成果を残し、それを認められたため上司になっていることが多いと思います。つまり、上司は基本的に部下よりも経験値が優っています。そのため、部下の目標達成へのプロセスが最適かどうかが先回りして見えてしまうのです。

その結果、部下が目標に向かっている途中で「あれ、どうなった? そのやり方よりこっちのやり方の方がいいんじゃない?」とついついアドバイスしてしまうのです。この経過介入が部下の主体性を削ぐマネジメントとなってしまうのです。

経過介入された指示が的確だった場合、部下はもっといい指示がほしいと思い「指示待ち思考」が加速します。一方、その指示通りに実行し、うまくいかなった場合は「上司の指示のせいでうまくいかなかった(自分に問題はなかった)」と考え、結果を自分ごととして捉えられません。その状態では部下は自分にベクトルが向かず、次にどうすればよいかという改善策を自ら考えることもなくなります。

よって、あくまで目標に向かうプロセスは部下本人に考えさせる。そして、その結果を(うまくいく、いかないにかかわらず)自分ごととして捉えさせる。これが、主体性を育む第一歩なのです。

ただ、そうは言っても、目標または期限に到達するまで放置し、気づいた時にはとんでもない方向に進んでいたということも避けなければなりません。それを防ぐための方法が、一つ前のポイントとリンクしますが、目標の高さ(難易度)と距離感(期限)のコントロール、目標の分解なのです。

大きな目標を達成するために通過しなければならない必要条件を中間地点(KPI)として手前に目標設定します。その中間地点毎に進捗を管理し達成度を確認していけばいいのです。能力の高い部下には遠く高い中間目標を、経験が浅く、能力の低い部下には近く、難易度の低い中間地点を設定し、部下本人が自分の力でゴールに到達するという経験をさせることが大切です。その経験を繰り返すことによって、少しずつ遠く、高いゴールに自分の力で向かえるようになるのです。

そして、あるタイミングで、「あれ? 自分が思いつかなかった(経験したことのない)いいアプローチをしているなぁ」と思ったらマネジメント成功です。上司であるあなたが適切な目標設定を行うことで方向性を示し、かつ、経過介入を堪えて部下の考える力を育んだことにより、部下は自分のイメージを超えるアウトプットをしてくるようになるのです。

おわりに

指示待ち社員を生まない、自分で考える社員を育てることは、組織の競争力を高め、持続的な成長を実現するために欠かせない要素です。そのためには、枠となる役割の設定、目標の明確化、目標管理のスキルが必要です。

これには組織のリーダーとして、現状の枠組みや目標、マネジメント方法を常に見直し、社員が自ら考え行動できる環境を整えることが、企業の未来を切り開く鍵となるでしょう。自分で考える力を持った社員が増えることで、組織全体の創造性と生産性が向上し、変化に強い組織を築くことができるのです。

識学総研:https://souken.shikigaku.jp
株式会社識学:https://corp.shikigaku.jp/

 

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