写真はイメージです。

NHK『日曜討論』ほか数々のメディアに出演し、シニア世代の生き方について持論を展開するライフ&キャリア研究家の楠木新さん。人生100年時代を楽しみ尽くすためには、「定年後」だけでなく、「75歳からの生き方」も想定しておく必要があると説きます。楠木さんが10年、500人以上の高齢者に取材を重ねて見えてきた、豊かな晩年のあり方について紹介します。

地方在住者は定年後もつながりやすい

かつて仕事で地方の県庁所在地にある市役所の人事課長と話したことがあります。公務員の60歳以降の再任用が検討されていた時、地方都市の役所の人事課長と、東京圏や大阪圏の市役所の人事課長が一緒になったことがあったそうです。

都心近くの人事課長は、「職員が定年退職して何もしなければ家に引きこもってしまうことにもなりかねない。定年後も元気で暮らしてもらうために、職員に対してどういう研修をすればよいか」と悩んでいたというのです。

一方で地方の人事課長は「退職してもやることがいっぱいある職員は多い。実家の農作業だけでなく地元の自治会の幹事や消防団の役員など、地元にいる人たちから頼りにされている。あまり心配していない」というのです。

実際に畑仕事や果物づくりをしている人は仕事や役割があるので、人と出会う機会や刺激もある。それに比べると都市部の定年退職者は社会とつながる機会がとても少ないのだろうと話していました。

地方でも県庁所在地くらいの都市部では、定年後に人とのつながりを失ってしまう例は結構あるそうです。家にこもりがちの生活になり、テレビの前から立ち上がれなくなったと述懐した人もいました。

その役所の職員に聞いてみると、農業などの取り組める仕事の有無や、住んでいる地域が活性化しているかどうかなどで大きな差はある。ただ団塊の世代が70代の半ばになったことから、今後は決して小さな問題ではなくなるだろうと話していました。

都会になればなるほど、人と人との結びつきや交流は希薄なので、定年後の新たな人とのつながりについて、定年前から徐々に考慮しておくべきなのでしょう。

ビジネス的な視点を持ち込みすぎない。次ページに続きます

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