文・石川真禧照(自動車生活探険家)
ガレージにあと1台分の空きスペースがあったら、そこにどのような車を足すか。車好きにこんな質問を投げかけたら、それこそかえってくる答えは百通り。一度は乗ってみたかった車がでてくる。
2人乗りのオープンカー、高級車、クラシックカーなどなど考えればきりがない。
なかでも多いのがジープタイプのオフロードカーだ。道なき道を冒険心で突き進む。泥や水たまりなんか気にせず走破する。そういう気分を味わえる車だ。代表格はもちろんジープ。現実的にはスズキ・ジムニーもあるが、本家はジープだ。
ジープは1940年、第二次世界大戦中に米陸軍が戦場の不整地を走行できる車の開発を発案し、それを実用化した車がルーツと言われている。
当初は軍用車両だったが、46年から市販化された。その後、生産する会社はいく度か変わったが、21世紀に入り、フィアット・クライスラー社(FCA)とグループPSAが合併し、ステランティスが誕生、現在に至っている。
肝心のジープは経営母体が点々とするなかでも開発、生産は継続してきた。車体のデザインも初代のジープをイメージして、改良を重ねている。
最新型は、2024年5月に日本で発表、発売された。車名はジープ・ラングラー。現在のジープにはいくつかの車名があるが、本家ジープのイメージを受け継いでいるのが、ラングラーだ。2018年に全面改良され、現在の車になった。このときの改良は、画期的と言われている。
それまでのラングラーは、形はジープだが、走行性能は、悪路走破性重視という初代からの流れを引き継いでおり、最近の使われ方には合っていなかった。とくに高速道路を長距離走行したり、峠道を軽快に走ったりするのには適していなかった。
足回りは構造的にも、用途でも荒地走行向きだった。メーカーもそこは気にしていたようで、2018年10月の大幅改良で実用性、居住性、乗り心地、品質のすべてを刷新した。
エンジンもそれまではV型6気筒3.6Lといういかにもアメリカ車らしい大排気量で、燃費は二の次、というのを搭載していた。新たに設計されたのは、4気筒2Lターボ。小型で軽く、出力やトルクはV6、3.6Lに近い数値を確保していた。
サスペンションも型式は変わらないが見直された。その結果、直進時、カーブでの安定感が飛躍的に向上した。以前は片側2車線道路で隣りの車を追い越すのも、車両の安定性に不安があったが、最新型は、自信を持って追い越しができるようになった。ジープファンには夢のような改良だった。
こうして年ごとに少しずつ、さらなる改良が加わった最新型は、固定式だったラジオ用アンテナが廃止され、サイドカーテンエアバッグが標準装備された。乗用車並みのタッチスクリーンも大型化され、これも標準装備になり、時代の流れに合わされた。
乗り心地、操縦性、快適性が向上した最新のジープ・ラングラーは、あと1台として加わったのに、日常使いの車になってしまう可能性が感じられる車かもしれない。
ジープ・ラングラー アンリミテッド サハラ
全長×全幅×全高 | 4870×1895×1845mm |
ホイールベース | 3010mm |
車両重量 | 2000kg |
エンジン | 直列4気筒DOHCガソリンターボ 1995cc |
最高出力 | 272ps/5250rpm |
最大トルク | 400Nm/3000rpm |
駆動形式 | 後2輪・4輪・オンディマンド4WD |
燃料消費率 | 9.8km/L(WLTC) |
使用燃料/容量 | 無鉛レギュラーガソリン/81L |
ミッション形式 | 電子制御式8速自動変速 |
サスペンション形式 | 前後:コイルリジット |
ブレーキ形式 | 前:ベンチレーテッドディスク/後:ディスク |
乗員定員 | 5名 |
車両価格(税込) | 839万円 |
問い合わせ先 | ジープフリーコール 0120-712-812 |
文/石川真禧照(自動車生活探険家)
20代で自動車評論の世界に入り、年間200台以上の自動車に試乗すること半世紀。日常生活と自動車との関わりを考えた評価、評論を得意とする。
撮影/萩原文博