実にありがたいことに、人生をやり直せる時代になりました。人生百年時代となった今では、定年退職は、第二の人生のスタートようにいわれています。そうは言っても「どこまでも続く人生」と思っていた、若き時とは違います。はっきりと意識しはじめるのは“人生の終焉”。躓いてしまえば、失う物が多いもの。
溢れる情報に惑わされず、巧妙で狡猾な罠を見破り、第二の人生を生きなければなりません。しかし、自分だけの知識や経験だけでは心許ないところも……。ならば、賢者の知恵を頼みとするのも一つの方法ではないでしょうか?
そうした賢者が残した一つの言葉をご紹介します。第22回の座右の銘にしたい言葉は「温故知新(おんこちしん)」 です。
目次
「温故知新」の意味
「温故知新」の由来
「温故知新」を座右の銘としてスピーチするなら
まとめ
「温故知新」の意味
「温故知新」について、『⼩学館デジタル⼤辞泉』では、「《「論語」為政から》過去の事実を研究し、そこから新しい知識や見解をひらくこと」とあります。過去の事柄を研究し、それを基に新しい知識や知恵を得ることを意味します。この言葉は、古いものや過去の経験を大切にし、その中から新しい視点や発見を見出す姿勢を表しています。
「温故知新」の由来
「温故知新」は、中国の古典『論語』為政の一節から来ています。
子曰、温故而知新、可以為師矣。
【書き下し文】
子曰く、故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知る、以って師と為るべし。
【現代語訳】
先生はおっしゃいました。「古くからの伝えを大切にして、新しい知識を得て行くことができれば、人を教える師となることができるでしょう。」と。
『論語』は孔子の言行録であり、弟子たちとの対話を記録した書物です。その中で、孔子は先述のように「故きを温ねて新しきを知る。以って師と為るべし」と述べています。「温(たず)ねて」を「温(あたた)めて」と読むこともあります。
これは、孔子が、人を教える師となる条件として、先人の思想や学問を研究するよう述べた言葉です。この教えが「温故知新」として後世に伝わりました。孔子は、過去の知識や経験を振り返り、それを基に新しい知識を得ることの重要性を説いています。
「温故知新」という言葉は、教育やビジネスの現場でもよく使われます。教育現場では、歴史や伝統文化を学び、それを現代の教育に活かすことが重要とされています。例えば、古典文学を学ぶことで日本の文化や価値観を理解し、それを現代の生活や社会にどう適応させるかを考えることができます。
ビジネスにおいても、過去の成功事例や失敗から学ぶことが新しい戦略の立案やイノベーションに繋がります。特に日本の企業文化では、長い歴史を持つ企業が多く、その歴史から学ぶことで持続可能な経営を実現しています。
「温故知新」を座右の銘としてスピーチするなら
「温故知新」という言葉を座右の銘にしたスピーチは、過去と現在、そして未来を繋ぐメッセージを強調することがポイントです。以下に「温故知新」を取り入れたスピーチの例をあげます。
企業経営における戦略についてのスピーチ例
私が座右の銘としている「温故知新」についてお話します。「温故知新」とは過去の事柄や知識をしっかりと学び、それを基に新しい知識や見解を得ることを意味します。
企業経営においても温故知新は重要です。例えば、過去のマーケティングキャンペーンの成功例や失敗例を詳細に分析し、その教訓を基に新しい戦略を立てます。私自身、過去に実施したキャンペーンが大きな成果を上げた理由を理解し、それを新しい製品やサービスのプロモーションに応用することで、再び成功を収めることができました。
このように、過去の経験を活かして新しい知識や戦略を生み出すことが、企業の成長につながります。皆さんも、ぜひこの言葉を座右の銘として、新しい挑戦に取り組んでみてください。
まとめ
「温故知新」の精神は、私たちが未来に向かって進むための大切な指針です。過去を大切にし、それを基盤に新しい知識やアイデアを生み出すことが、私たちの成長と発展に繋がります。過去の知恵を大切にしつつ、新しい知見を得ることで、より豊かな人生を築いていきましょう。
●執筆/武田さゆり
国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。
●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com