サライ世代にもなると、血気盛んであった頃からすれば、角も取れて随分と丸くなったように思います。また、人生長く生きていれば、それなりに多くのことを学び、悟ることができたようにも感じます。
しかし、その一方で未だ多くを悟りきれていないことも自覚するものです。若い頃「もっと、勉強すればよかった」と後悔するのは、まだまだ、頭が柔軟な証拠。先人が残してくれた名言や諺から、若かりし頃とは一味も二味も違った学びや悟りが得られるのではないでしょうか?
第16回の座右の銘にしたい言葉は「案ずるより産むが易し(あんずるよりうむがやすし)」 です。
目次
「案ずるより産むが易し」の意味
「案ずるより産むが易し」の由来
「案ずるより産むが易し」を座右の銘としてスピーチするなら
最後に
「案ずるより産むが易し」の意味
「案ずるより産むが易し」について、『⼩学館デジタル⼤辞泉』では、「物事はあれこれ心配するより実行してみれば案外たやすいものだ」とあります。心配事をあれこれ考えるよりも、実際に行動に移した方が容易であるという意味です。この言葉は、事前に過剰に悩むことなく、思い切って行動することの重要性を示唆しています。
何か新しいことを始める際には不安や恐れがつきものですが、実際に行動を起こすことで予想外の成功が得られることも多いのです。行動することで想像以上にスムーズに事が運ぶことが多いため、このことわざは多くの人にとって勇気づけられるメッセージとなっています。
「案ずるより産むが易し」の由来
「案ずるより産むが易し」には、そのものズバリの出典があるわけではありません。昔から出産する前には、本人も周囲の人もあれこれと心配するものですが、実際、出産してみると意外とたやすかった、ということがありますね。ここから、取り越し苦労をするよりも、まずは勇気をもって行動することが大切であることを意味するようになりました。
元々は、「案ずるより生むが易し」と書かれることもあり、「案ずる」が「心配する」、「生む」が「産み出す、創造する」という意味です。時代を超えて、多くの人々がこの言葉を通じて、不安を乗り越え、積極的な行動を促すモチベーションを見出してきました。
「案ずるより産むが易し」を座右の銘としてスピーチするなら
この座右の銘を使ってスピーチする場合、自身の経験や具体的な例を交えながら、聴衆に行動の大切さを訴えることが重要です。例えば、新しいプロジェクトを始めた際の成功体験や、行動することで克服した困難を共有することが効果的です。
「案ずるより産むが易し」という言葉を引用しながら、聴衆が抱える不安を和らげ、勇気づけるメッセージを伝えることができます。以下に、「案ずるより産むが易し」を取り入れたスピーチの例を三つあげます。
1:リタイアメント後の新しいキャリアの開始についてのスピーチ例
長年勤めた会社を退職した後、新しいキャリアを探すことは誰にとっても怖いことです。私自身、60歳を過ぎてからまったく異なる業界に飛び込む決断をしました。不安を抱えながらも、「案ずるより産むが易し」の精神を思い出し、コンサルタントとしての第二のキャリアをスタートさせたのです。
実際に挑戦してみると、新しい知識とスキルを身につけることができ、心地よい刺激を感じる日々を送っています。この経験が私に教えてくれたのは、行動することの大切さです。私に新たな人生の扉を開く勇気を与えてくれました。
2:趣味やスポーツの挑戦についてのスピーチ例
定年退職を機に、これまで挑戦したことのなかったゴルフを始めることにしました。それまでゴルフの経験などまったくなく、最初はどうなることかと思いましたが、「案ずるより産むが易し」を胸に実際にコースに出てみると、自然の中で運動する楽しさにすっかり魅了されました。皆についていけるか、不安を感じることもありましたが、やってみると思いのほか楽しく、体調も良くなってきて、新しい友人も増えました。
3:ボランティア活動への参加についてのスピーチ例
定年退職後は地元に貢献したいと考えて、地域の読み聞かせボランティアに参加することにしました。最初は子どもたちとのコミュニケーションや活動内容に不安を感じましたが、「案ずるより産むが易し」の言葉が私を動かしました。実際に参加してみると、子どもたちの笑顔や反応を見ることができ、とてもやりがいを感じるようになりました。不安を乗り越えて一歩踏み出すことの価値を実感しています。今ではこの活動が私の大きな喜びとなっています。
最後に
「案ずるより産むが易し」ということわざは、ただの古い言葉ではなく、現代においても私たちの生活や心に深く響く教訓を持っています。不安があるからと言って行動を避けるのではなく、勇気を持って一歩を踏み出すことの大切さを、この言葉は教えてくれます。何事も、行動することで新たな道が開け、予想外の成功が待っているかもしれません。新しいことに挑戦する際は、ぜひ、この言葉を思い出してください。
●執筆/武田さゆり
国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。
●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com