生き方の調整を迫られる引退。それまでの人生を形作ってきた社会的構造から、未経験の領域に足を踏み出すのですから、不安を感じて当然です。

リタイア後の生活を順調に繰り出すためにも、この不安に振り回されないようにするのが得策。そこで今回は米国カリフォルニア州立大学・心理学部教授のケネス・S・シュルツ氏監修の『リタイアの心理学 定年の後をしあわせに生きる』(日経ナショナル ジオグラフィック社)を参考に、不安解消のためにすぐできる5つのことをお伝えしていきましょう。

■1:何が心配なのかをひとつずつあげてみる

不安は未知のものへの恐怖から生まれます。不安な気持ちに襲われたら、ひとまず何が心配なのか1つずつ挙げてみましょう。

心配な要素を明確化させることで、漠然とした不安な感情にのみこまれずに、問題に対処することに気持ちが向かいます。

■2:財政状況を洗い出してみる

老後の資金繰りが不安という人は、具体的な事項を書き出してみます。プロの手を借りて財政状況を洗い出してみることも一案。

今の状況をまず把握することで、自分でコントロールすべき対象がわかり、心の落ち着きを取り戻せるはずです。

■3:カフェインを遠ざける

不安を抑えるには摂取を避けたいものがあります。その一つがカフェイン。刺激性があるので、不安なときは、鎮静させたい体内システムの働きをかえって加速させ、不安度を高めてしまいます。

■4:運動する

運動することで脳内物質エンドルフィンの分泌が促進され、心身の乱れが整ってきます。定期的に運動する人は不安障害になるリスクが25%少ないという研究結果もあります。

ハードな運動ではなく、中程度の心地よく汗をかく運動がおすすめです。

■5:人と接触する

米ノースカロライナ大学の研究では、愛する人と手を握ったり、抱き合ったりすると心拍数と血圧が目に見えて低下するという結果も。

人は社会的な動物なので、誰かと一緒にいると心が落ち着き、不安が解消されてゆきます。引退を機に、家族関係や夫婦の絆を見直してみると良いでしょう。

*  *  *

以上、リタイア後の不安解消のためにできることを5つご紹介しました。

不安によるストレスの強さによっても、対処法は変わってきます。「時々不安になる」というなら上記の5つを試してみましょう。時間がたてば自然に解消されてきます。

しかし不安障害という状態は、専門家の治療が必要になります。不安が高じて生活の質が落ちていると感じたら、専門家の助けを借りること。

不安の克服には時間がかかります。お金を使う、アルコールに頼るといった、その場しのぎの解決策ではなく、長い目で取り組みながら、安定した精神状態で新しい生活を切り開きましょう。

【参考文献】
『リタイアの心理学 定年の後をしあわせに生きる
(S・シュルツ監修、藤井留美 訳、定価 2,800円+税、日経ナショナル ジオグラフィック社)
http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/product/16/010500050/

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文/庄司真紀

 

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