引退後に独立して、事業を始める人が増えています。そろそろ退職という人は、これまでの経験と人脈を生かし、社会に貢献するという道も頭に浮かぶのではないでしょうか。
誰かの下で働くのとは違い、独立して働くことは、引退後の生きがいとなり、生活をより豊かにする収入源となります。挑戦してみるのも悪くありませんね。
そこで今回は、米国カリフォルニア州立大学・心理学部教授のケネス・S・シュルツ氏監修の『リタイアの心理学 定年の後をしあわせに生きる』(日経ナショナル ジオグラフィック社)を参考に、引退後の新たな挑戦に向けた準備についてお伝えしていきます。
■1:コンサルタントになる
これまでの仕事や人生で得たノウハウを活かし、コンサルタント業をするという選択があります。
経験と知識を基に、依頼を受けて助言をするコンサルタント。この仕事を選ぶメリットとしては、働く現場に片足を置いたまま、セミリタイアをさせてくれることにあります。また知的刺激が多いので、認知機能の低下防止にもひと役買ってくれます。
コンサルタントになるのに特定の資格は必要ではありませんが、米国の状況を参考にすると、コンサルタントとして求められる人材の条件は、専門分野で平均25年の活動歴があることだそうです。さらに修士号・博士号を所持しているかどうかも、ひとつの目安となります。
さらに在職時の人脈や、自分のユニークな才能が生かせる市場があるかどうかも重要。誰もコンサルティングしていないようなニッチな分野は、穴場として狙えるかもしれません。
フリーのコンサルタントとしてやっていくつもりなら、退職前から動き出し、個人のウェブサイトを作ったり、関連しそうな交流会で名刺を交換しておくなど、積極的に売り込みを始めておくとよいです。
フリーで活動するのに抵抗がある人には、人材発掘・派遣会社の門を叩くという手も。そういう会社の中には、特定分野の助言を求める企業に年長のコンサルタントを配置するところもあります。マーケティング、医療、保険、観光、IT、通信といった分野はそのような傾向が強いので、探してみる価値はあるでしょう。
■2:独立・起業する
次に、小規模でも事業を営むという選択肢についてご紹介しましょう。
引退後に事業を始めるというなら、まず自分が熟知する分野、長く活躍したいと思える分野を選び、厳密な財務計画を立てましょう。
初期コストがあまりかからない事業か、投資であれば丸損しても痛くない金額までにすること。退職金は手つかずで残しておくこと。など、失敗するあらゆる可能性を視野に入れておいた方が良いでしょう。
その上で、今持っているスキルにもう少し磨きをかけることも良い考えです。コミュニティーカレッジや社会人講座に入って、財務、経理、法律、税務など、会社経営に不可欠なスキルを学びなおすのも、独立の大きな武器になるはずです。
ハイテク業界ではコネの賞味期限は1年半から2年までといいます。これまで培った人脈を活かしたいなら、コネがまだ有効な間の適切なタイミングを見計らうことです。
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以上、引退後の新たな挑戦に向けた準備のポイントをご紹介しました。いずれの場合も、自分の向き不向きや経済性を客観的にみるところから始まります。
米国では、2013年に新規開業した会社の23.6%が、55〜64歳の人が始めたものだそうです。これからの日本でも、引退後の独立は、より現実的な選択肢になっていくと思われます。これから定年を迎えるという方は、自分に何ができそうか、じっくり考えてみてはいかがでしょうか。
【参考文献】
『リタイアの心理学 定年の後をしあわせに生きる』
(S・シュルツ監修、藤井留美 訳、日経ナショナル ジオグラフィック社)
http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/product/16/010500050/
文/庄司真紀