社会での女性の地位向上はまだまだ遅れてはいますが、結婚してからも仕事を続ける妻が、家事・育児を一人でこなすのではなく、夫と分担するという考え方が支持されるようになってきています。その一方で、「オレが働いて収入を得ているのだから、対価のない家事・育児は妻がやるのが当たり前」と考えている男性たちも、まだ少なくないというのが実情です。
日常の中で妻たちを怒らせる、夫たちの無神経な発言を「地雷ワード」と呼びます。
夫婦問題研究家として、相談件数4万件以上を手がけた夫婦カウンセリングのパイオニアである岡野あつこさんを監修者に迎えた『無自覚な夫のための妻の地雷ワード事典』から、妻をイラっとさせる地雷ワードをご紹介します。妻からは共感の嵐ともいえる言葉ばかりで、夫からは「そんなことで怒るの?」という気づきがあるはずです。今回は妻たちをイラつかせる地雷ワードと、その言い換え方法をご紹介します。発言を少し工夫するだけで夫婦関係は円満になるもの。ぜひ、参考にしてください。
監修/岡野あつこ
身に覚えのある発言はありませんか?
夫にとっては何気なく言っただけのひと言。しかし、気づかいが足りないと、悪気がなくても妻を怒らせたり、傷つけたりすることも……。妻に対して夫が“言いがち”な地雷ワードをご紹介します。
「仕事なんだから、しょうがないだろ」
休日に家族で外出する計画を立て、子どもも楽しめるところへ行こうとしていた矢先、前日などに夫から発せられる定番の反故ワード。仕事を理由にすれば何でも許されるような口ぶりで言い放たれることが多く、その物言いに諦めよりも、怒りの矛先を向ける相手がいないことにイラ立った妻に、「単に仕事の効率が悪いから休日出勤になったのでは」と勘ぐられても仕方ないでしょう。できない言い訳として、仕事を免罪符にしてはいけません。
[地雷ワードの言い換え]
「どうしてもの仕事が入っちゃって本当にごめん」
「どうしてもの~」とつけると優先順位が高いイメージになり、「仕方ない」と思ってもらえます。さらに「本当に」をつけることでより深い謝罪に。
「言ってくれれば、やったのに」
夫は家のことなど「何もやってくれない」と思った妻が、不満を漏らした際などに放たれる夫のひと言。長らく玄関などに置きっぱなしにしていた大きな荷物を妻が一人でせっせと片づけているのを見て、「言ってくれれば……」と後ろから声をかけるなんてシチュエーションが多いです。夫側はあくまで「言ってくれれば」というスタンスなので、妻から頼まれなければやる気はないし、全面的に責任を負うつもりもないという基本姿勢が見え隠れする発言です。特に共働き家庭の場合、家事・育児を夫婦で平等に行うことは当然のことであり、“言われたらやる”というスタンスは、発言だけでなく、態度としても控えるべきでしょう。
[地雷ワードの言い換え]
「気がつかなくてごめん。これからは気をつけるね」
地雷を踏みそうなときは、素直に謝ることが先決です。できないことの弁解や「あとからこうすれば」「こうしたらやった」といった言い訳をするのではなく、「今回はできなかったけれど、次はがんばる」という姿勢を見せましょう。
「そういや、あのとき思ったんだよな~」
子ども用品などを買う際に、確認をとって同意したはずが購入後に夫の実家から同じ品物が送られてきたときなど、義母から事前に「送るよ」と知らされていたのに失念していた夫が吐いたひと言。普段から「無駄づかいするな」と口酸っぱく言う割に、自分の失敗は棚にあげ「ワルイワルイ」と軽い謝罪の後、こんな言葉が続きます。その調子のよさに妻は呆れて責める気力すら失うことでしょう。
[地雷ワードの言い換え]
「聞いていたのに忘れていてごめん。取り替えてもらえるか聞いてみるね」
自分のもの忘れが原因のミスなのに、「あのとき思った」などと軽い発言をしたら妻が怒るのは当たり前。しっかりと謝って、対処法まで考えて提案しましょう。
「いいんじゃない?」
家庭内の事柄について相談して決めたい妻に対し、聞いているのかいないのかはっきりしない表情で返した夫のひと言。「そんなのどうでもいいじゃん」というニュアンスを醸し出しており、妻の話に真剣に向き合っていない感が見え見えです。あとになって「えっ?聞いてないよ」などと言い出そうものなら、妻の怒りが爆発することは間違いありません。
[地雷ワードの言い換え]
「一生懸命考えてくれたんだね。オレもそれがいいと思う」
まずは妻が一生懸命考えてくれたことを労い、そのうえで妻の意見に賛同していることを伝えましょう。
「じゃ、仕事辞めたら?」
仕事と家事・育児の両立で多忙な妻が、どうしても手が回らず、夫にヘルプを頼んだときに、「何でオレが?」という表情で吐きがちなひと言。妻が働いていようが、家計を支えているのは自分であり、暮らしに支障が出るのならば辞めるのは妻という発想にもとづいた言葉です。共稼ぎだった妻が働かなくなることで、どれほど家計に影響を及ぼすかについて想像力が及んでいない可能性も。
[地雷ワードの言い換え]
「家計を助ける気持ちは嬉しいけど、ムリしてない? オレも家のことは一緒にやるよ」
妻が家計を助けようとしている気持ちは受け取りつつ、忙しい妻への気づかいを示しましょう。
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無自覚な夫のための妻の地雷ワード事典
監修/岡野あつこ
日本文芸社 1,210円
岡野あつこ(おかの・あつこ)
夫婦問題研究家、公認心理師、社会デザイン学MBA。目白短期大学非常勤講師。
1991年に離婚相談室を設立、相談件数4万件以上を手がけた夫婦カウンセリングのパイオニア。離婚・夫婦問題カウンセラー養成講座で後進を育成。マル秘テクニックを交えた的確なアドバイスが好評。NPO日本家族問題相談連盟理事長。『ある日突然妻がいなくなった―聞こえていますか、妻の本音』(ベストブック)、『産後クライシス なぜ、出産後に夫婦の危機が訪れるのか』(角川学芸出版)、『最新 離婚の準備・手続き・進め方のすべて』(日本文芸社)、『夫婦がベストパートナーに変わる77の魔法』(サンマーク出版)ほか30冊以上の著書があり、総合情報サイト「All About」の離婚ガイドも担当。テレビ、雑誌などのメディアに多数出演するほか、YouTubeチャンネル「岡野あつこチャンネル」を運営。