マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研(https://souken.shikigaku.jp)」が、サライ世代に向けて、ビジネスの最前線の問題を解説するシリーズ。今回は、人事異動により他部署から人材を受け入れるリーダーに向けて「未経験の部下を育てるコツ」をお伝えします。
最終のゴールを設定する
まず行っていただきたいのは「ゴール設定」です。いつまでにどのようになってほしいのかの設定です。リーダーとそのメンバーとの間でゴール期日とその時の状態においての認識にズレが生じない設定です。
「とにかくできるだけ早く一人前になってほしい」というゴールの設定はNGです。「できるだけ早く」の期限設定、「一人前」という状態では、リーダーとメンバーとの間で解釈にズレが生じるからです。「12月末までに人に聞かずとも〇〇の業務を一人でミスなく完了できるようになる」などの表現で設定するようにしましょう。
設定した最終のゴールの因数分解
次に行っていただきたいことは因数分解です。最終ゴールを「逆算スケジュール化」していきます。
例えば、「12月末までに人に聞かずとも〇〇の業務を一人でミスなく完了できるようになる」とした最終ゴールを「10月末までには〇〇を理解出来ているようにする」などのようにマイルストーン(中間目標)を設定していきます。
最終のゴールの因数分解=逆算スケジュール化=マイルストーンの設定をすることで、リーダーにとってはチェックポイント(=管理ポイント)が明確になります。メンバーにとっては目指すゴールがイメージできて一層集中しやすくなります。
教育の場の設定
最終のゴールの因数分解が完了した後に実施していただきたいのが、「教育」です。「教育」とは「ゴールを目指そうとした時に予め理解しておかなければならない事柄、最低限身に着けておかないといけない事柄を理解させる・習得させる」ことです。商品知識、社内ルール、業界慣習、法律などがこれに該当するテーマです。
「やりながら覚えさせる」教育手法は弊害を生みます。ゴールの達成において事前の理解・習得がない状態で実業務に触れると、「何が足りてなくて出来ないのか?」が判断できません。メンバーも「どうすれば評価を獲得できるのか? まずは何から始めれば良いのか?」が認識できません。リーダーとメンバーの双方が思考停止状態に陥りやすくなる弊害です。実業務に当たらせる前に教育を施すことを実施していただきたいと思います。
結果を評価する
教育を施し理解・習得が完了した次は、「評価」です。「評価」における重要なポイントは結果を評価することです。やり方・行動を評価しないことです。
メンバーと過ごす時間が長くなれば長くなるほど、リーダーにはメンバーへの情が発生して、ついつい「頑張り」を評価したくなります。「結果」でないものを評価すると弊害が発生します。リーダーとメンバーとの間で「結果」に対する解釈が一致しません。「何がどれほどできているのか? 何がどれほどできていないのか?」が一致しないため、成長感は醸成されずモヤモヤする時間が蓄積されてメンタル不調にもつながります。
顧客は会社の頑張りを評価してくれません。市場は「結果」しか評価しません。顧客、市場が評価しないものを評価すると会社自体の持続的発展にブレーキをかけることになります。
結果管理
リーダーは「結果」を評価していきますが、「管理=日々のマネジメント」も「結果」になります。「結果」でないものを「管理」するとリーダーとメンバーの双方に弊害が発生します。
【リーダーに発生する弊害】
リーダーが「結果」でないものを「管理」すると、現場仕事に忙殺されてしまいます。リーダーの役割は、自身のチームを勝たせるために未来を見据えることです。「現場仕事に忙殺される」状態は、リーダーが自らの責任を放棄していることと同義になります。
【メンバーに発生する弊害】
メンバーが「結果」でないものを「管理」されると、受け身になりやすくなります。メンバーは「指示待ち人間」として成長するようになります。わからないことがあれば直ぐにリーダーに質問するようになります。自分で考えることが面倒臭くなるようになります。
また、メンバーが言い訳体質に変化するようになります。「リーダーの言った通りにやったのに上手く結果がでないのは、リーダーの指示が悪い、自分自身に非は無い」と自己評価するようになってしまいます。
リーダーが「結果」でないものを「管理」すると上記の通り良いことは何ひとつ生まれません。
まとめ
リーダーは人事異動により他部署から人材を受け入れる際、最終ゴールを設定し、その最終ゴールを因数分解することから始めましょう。次に実践すべきことは「教育」であり、「結果」を評価し、「結果」をマネジメントすることです。
「成長」とは、「できなかったことができるようになる」ことです。まず実現しなければならないのは、「できていないことを正しく自覚させる」ことです。「正しい自覚」とは、リーダーとメンバーとの間で結果に対する解釈にズレが生じていないことです。「できていないことの正しい自覚」には、「結果」の評価が絶対です。
リーダーが「結果」でないものを「管理」すると、メンバーは「リーダーの言った通りにやったのに上手く結果がでないのは、リーダーの指示が悪い、自分自身に非は無い」となり、できていないことを自責で認識できなくなります。
部下育成において多くの企業で行われている手法がOTJ制度ですが、「教育」が十分に行われずに現場仕事を経験させています。「やりながら覚えさせる」教育手法は弊害を生みます。リーダーとメンバーの双方が思考停止状態に陥りやすくなることでしょう。
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