50歳までに一度も結婚したことがない人の割合を示す「生涯未婚率」という言葉が話題だ。これは、国立社会保障・人口問題研究所が、5年に一度の国勢調査に基づいて公表している数値で、最新の2020年調査によると生涯未婚率は男性が28.25%、女性が17.85%だった。1985年のデータを見ると男女ともに5%未満。結婚を選ばない人が増えている。
今回の依頼者は、会社員の道子さん(55歳)だ。「婚約者の素行調査をお願いしたいのです」と、キャリア10年以上、3000件以上の調査実績がある私立探偵・山村佳子さんのもとに来た。
道子さんは外資系の美容関連メーカーに勤務しており、若々しくて魅力的。3年前のコロナ禍に帰国し、終活の一環として婚活を開始。多くの失敗と絶望を経て、半年前に昔から知り合いの2歳年下の男性と交際をスタート。結婚を前提に同棲している。
【それまでの経緯は前編で】
「普通の優しそうなおじさん」がモテていた
道子さんはプライドが高く、自信もあり、実年齢よりも若々しい。能力を維持するための努力を惜しまない女性です。加えて、自分以外の人の能力は低いと思っていることを隠さない性格でもあります。
そんな道子さんが「好きでたまらない」と言う男性はどんな人だろうと思い、朝から都心のマンションで張り込みスタート。相手の男性も外資系のIT企業に勤務しており、朝は一緒に家を出るそうです。
朝8時半に道子さんと彼が出てきました。容姿は身長160cm台で中肉中背。地味で普通のジャケットパンツスタイルです。道子さんはきょろきょろと私たちがいるかどうか探しています。彼に“どうしたの?”と言われて、ごまかしていました。
駅まで3分程度、道子さんから手を繋いで歩き、電車で出勤。彼は道子さんを自然にエスコートしています。道子さんが電車を降りたときも、手を振っていました。
彼は会社がある駅を超え、下町エリアのターミナル駅で下車。そして、駅から5分程度歩いたところにある、古いマンションに入って行ったのです。
間取りを調べると1Kで、表札には会社名が書いてあります。調べると社長として彼の名前が登記されている。どうやら副業で運営している会社のようです。路地から部屋の中は丸見えで、中の様子を見ていると、PCデスクと本棚、冷蔵庫とベッドがある部屋で、ジャケットを脱いだ彼がパソコンを叩いているのが見えます。
お昼になると近所のお蕎麦屋さんへ。顔なじみのようで、常連の男性と談笑したり、おかみさんと冗談を言ったりしており超社交的。「今日はひとりなの?」と派手な中年女性から話しかけられ、「からすみを作ったから彼女と食べな」と渡されていました。ほかにもおばさま方から「あら!来てたの!?」とちやほやされています。そのひとりひとりに、紳士に対応して、相手の話を聞いている彼。これはモテると感じました。
この庶民的な店に道子さんは来ているのかと思いましたが、周囲の人の話の内容を付け合せると、別人のようです。その日は再びマンションに戻り、23時に帰宅。翌朝は会社に出勤し、男性の部下と飲み、22時に帰宅。
3日目も会社に出勤したのですが、足取りはいつもより軽い。これは何かがあると思い張っていると、15時に出て来て、タクシーで副業で運営している会社のマンションに向かいます。
慌ただしく中に入り、反対側から中を見ようとすると、きっちりとカーテンが閉められていました。そこで音を拾いに行くと、女性と愛を交わし始めた音声が聞こえてきました。
それから2時間後、17時に40代と思しき、地味で柔らかい雰囲気の女性と出てきます。2人は手を繋いで、お蕎麦屋さんへ。女性のほうが、彼にベタぼれという雰囲気で腕をからませていました。彼は明らかに楽しそうで、店内に入る時も、彼女をエスコート。常連客と交流しつつ、テレビを見ながらあれこれ話して2時間後に店を出ます。
2人は駅に向かいますが、今度は彼の方が名残惜しいらしく、物陰で抱き合ったりキスしたり。女性は切なそうな表情を浮かべ「別れたくない。さみしい」と言い、ギュッとハグ。
【郊外に向かう電車に乗り、変わっていく表情……次のページに続きます】