資産をどう築き その価値をいかに守るか
「人生100年時代」を豊かに生きるためにも、お金の不安は払拭しておきたい。その有効な手段のひとつとされるのが投資だ。目先の損得勘定にとらわれず、長期的な視点での実践を考えたい。
【第5講】投資を活用する「中・上級編」
「損をしても構わない“余裕資金”を使いましょう」
つみたてNISAを活用した老後資金作りは、いったん始めてしまえば、あとは継続するだけでほとんど手をかける部分はない。面倒のなさは特色でもあるが、物足りなさを感じてしまう人もいるだろう。そこで、そんな人が投資の次のステップに進むために、他の金融商品を紹介しておきたい。
まずは株式投資。毎日頻繁に売買を繰り返して利益を狙う“デイトレード”は別だが、本来の株式投資の醍醐味は、これから業績が上がりそうな企業の発掘にある。
そのためには、景気動向や業界動向、企業財務、さらには国内外の政治動向に関する知識も手がかりになる。いわば知的なゲームの側面があるといえるだろう。これまではリスクを強調してきたが、投資金額を抑えれば損失は限定できる。
次に債券。購入しやすいのは財務省が発行する個人向け国債だが、金利面では物足りない。ある程度の利回りを得るためには社債が有力な選択肢となる。利回りが確保された信用力が高い企業の社債は、発売後、短時間に売り切れとなるケースが多い。そうした社債の購入には、複数の証券会社に口座を開設し、普段から社債の情報収集を心がけておく、といった作業が必要になる。
外貨預金は外貨での出金も
昨今の急激な円安を受けて、注目度が上がっているのが外貨投資。身近な金融商品は外貨預金だろう。現在、米ドルの定期預金(1年物)では、4%の金利を提示している銀行もある。
円安傾向が続き、満期時に現在より円安になっていれば為替差益が上乗せされる。逆に、円高になれば為替差損が発生して、元本割れになる可能性も少なくない。
海外旅行が趣味であれば、外貨預金を日本円で引き出さず、外貨のまま出金するという手もある。為替差損が発生しても、旅行先で使えば損失にはならず、利息分だけ増やしたことになるからだ。
最後は「金」への投資。本来、金のような実物資産への投資はリスクが高いが、少額から始められる純金積立ならリスクを抑制できる。歴史を振り返っても、実物資産としての金には常に一定の価値がある。財産として末永く残せる点も大きな魅力だ。
「低リスクの債券は別として、個別の金融商品への投資は、損をしても構わない“余裕資金”で行なうのが基本です。その分、利益が出たら、趣味などに積極的に出費してもいいと思います。投資の利益で生活を充実させるというのも、投資本来の目的のひとつだと思います」(ファイナンシャルプランナー 井戸美枝さん)
※この記事は『サライ』2023年1月号より転載しました。