101歳のいまも活躍する現役の日本最高齢ピアニスト、室井摩耶子さん。自分らしく、幸せに生きるコツは、「わたしという『個』、わたしの『心とからだ』の声に従ってきたから」だと言います。そんなマヤコさんの生きる指針をご紹介します。「人生100年時代」と言われるいま、将来の暮らしに漠然とした不安を持っている方のヒントになるはずです。
文/室井摩耶子
人の言うことは聞かない
「なぜ100歳を過ぎても元気なのか」と、よく尋ねられるようになりました。
思ったようにすたすたと歩けず、「マヤコ、しっかり!」と何度も口にするわたしですが、そうですね、それでも元気に楽しく暮らしています。きっと「人の目」を気にしないことがいいのね。こうしなさい、ああしなさい、と周囲はいろいろ言うけれど、どうしようもできないことはあります。嫌なことは嫌ですし、噓つきの人とは誰であっても付き合いたくありません。
まあ勝手なんでしょうね。
ピアノを選んだのもわたし。
結婚せずにひとりでいるのもわたし。
眠くなったら「からだがノーって言ってるわ」とさっさと寝てしまうのがわたし。
相手にも頼りたくないし、求めない。
食べたいものを食べ、やりたいことをやる。
心とからだの自然に任せた生活で、人の言うことは聞きません(たまに、医者の言うことも無視します)。
嫌なことも素敵なことも、「頭陀袋」に放り込んでおしまい。
「心とからだ」の声に従う
そんなふうに自分らしく、個性豊かに生きたほうがいいなんて考えていたら、こんな考えが浮かんできました。「老いては『子』に従え」と言いますが、「老いては『個』に従え」ではないかと。
年老いた後は、何事も子どもに任せるのがいいという格言めいた言葉がありますが、わたしは最期まで、「個」の意志を貫いて生きることが大切だと思うのです。わたしという「個」、わたしの「心とからだ」に自然体で従ってきたからこそ、年齢を重ねても、いつまでも幸せに生きられています。
それが健康長寿や元気の秘訣なのかもしれませんね。こんな話にお付き合いいただけますでしょうか?
101歳になったからといって、めでたいことはないけれど、遺言代わりに、好き勝手に話してみようと思うことにしました。ではわたしの話を聞いてください。
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『マヤコ一〇一歳 元気な心とからだを保つコツ』(室井摩耶子 著)
小学館
室井摩耶子(むろい・まやこ)
大正10年4月18日、東京生まれ。6歳でピアノを始める。東京音楽学校(現・東京藝術大学)を首席で卒業後、同校 研究科を修了。昭和20年1月に日本交響楽団(NHK交 響楽団の前身)演奏会でソリストとしてデビュー。昭和30年、映画『ここに泉あり』にピアニスト役(実名)で出演。昭和31年にモーツァルト「生誕200年記念祭」に日本代表としてウィーン(オーストリア)へ派遣され、同年、第1回ドイツ政府給費留学生としてベルリン音楽大学(ドイツ)に留学。以後、海外を拠点に13カ国でリサイタルを開催、ドイツで「世界150人のピアニスト」に選ばれる。59歳のとき、演奏拠点を日本に移す。CDに『ハイドンは面白い!』など。平成24年、新日鉄音楽賞特別賞を受賞。平成30年度文化庁長官表彰。令和3年、名誉都民に選定される。101歳のいまも活躍する現役の日本最高齢ピアニスト。