文/中村康宏、内本菜穂
近年、患者数が増加している睡眠時無呼吸症候群(SAS)。
日本では、成人の2〜7%にみられ、治療をしている方も増加傾向にあります。(日本呼吸器学会)
今回は身近な病気になりつつある睡眠時無呼吸症候群について解説します。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは
大きないびきとともに、睡眠中に何度も呼吸が止まる病気です。
10秒以上呼吸が止まる「無呼吸」や、呼吸が弱くなる「低呼吸」が、1時間あたり5回以上繰り返される状態をいいます。
無呼吸に伴う低酸素状態が続くと、高血圧などの生活習慣病、狭心症、心筋梗塞などの冠動脈疾患や脳卒中の発症にも深く関連してきます。
低酸素状態が続くと熟睡できず、睡眠不足の状態になるため、日中の強い眠気や倦怠感、起床時の頭痛、気分の落ち込みなどがあらわれ、仕事や勉強がはかどらないなど、作業能率の低下や、交通事故に繋がる危険性もあります。
原因
主な原因のひとつとして、肥満によりのどに脂肪が蓄積して気道が狭くなるうえに、あおむけで寝ることでさらに気道が狭まり、この狭くなった気道を空気が通るたびに、大きないびきが起こります。
そして、この気道が完全に塞がれたときに、無呼吸となります。
痩せている人でも、下あごが小さい、後退している、扁桃腺が大きいなどがあれば、気道が狭くなりやすく睡眠時無呼吸症候群の原因となります。
他にも、閉経後の女性や高齢者でも睡眠時無呼吸症候群は増加します。
症状
下記に当てはまるものが多いほど、睡眠時無呼吸症候群である可能性が高くなります。
一度医療機関での相談をおすすめします。
・肥満
・睡眠中の呼吸停止やいびきを周りに指摘されている
・睡眠時間を十分に確保しているのに日中の強い眠気や睡眠不足の状態が続いている
・夜間、何度もトイレに行く
・起床時の頭痛
・起床時の口や喉の渇き
・記憶力や集中力の低下
・ED
治療法
一般的には、マスクを介して持続的に空気を送ることで、狭くなっている気道を広げる治療法(CPAP)が標準的治療とされています。また、下あごを前方に移動させるマウスピースを使用する治療法や、扁桃肥大や鼻閉が原因の場合は、手術による治療が行われる場合もあります。
これらの治療法と並行して、生活習慣を改善する事も大切です。
肥満により睡眠時無呼吸症候群を発症している方は、減量する事で症状を軽くする事ができます。
また、飲酒は筋肉を緩める作用があるため、舌根が落ち込む事で気道を塞ぎやすくし、いびきや無呼吸に繋がる可能性があります。寝つきが良くなることもありますが、夜中に目が覚めたり、睡眠が浅くなることもあるため、深酒はせず、減酒を心がけましょう。
最近はスマートフォンのアプリで睡眠中のいびきや体の動きを記録してくれるものも出ています。
自分では気づけない睡眠中の問題を可視化し、必要な対策や治療をする事で、質の良い睡眠を取ることに繋がるかもしれません。日常のパフォーマンス向上や健康維持の為にも一度ご自身の「睡眠」を見直してみてはいかがでしょうか。
文/中村康宏
医師。虎ノ門中村クリニック院長。アメリカ公衆衛生学修士。関西医科大学卒業後、虎の門病院で勤務。予防の必要性を痛感し、アメリカ・ニューヨークへ留学。予防サービスが充実したクリニック等での研修を通して予防医療の最前線を学ぶ。また、米大学院で予防医療の研究に従事。同公衆衛生修士課程修了。帰国後、日本初のアメリカ抗加齢学会施設認定を受けた「虎の門中村康宏クリニック」にて院長。一般内科診療から健康増進・アンチエイジング医療までの幅広い医療を、予防的観点から提供している。近著に「HEALTH LITERACY NYセレブたちがパフォーマンスを最大に上げるためにやっていること」(主婦の友社刊)がある。
【クリニック情報】
虎の門中村クリニック
ホームページ:https://toranyc.com
住所:東京都港区虎ノ門3丁目10-4 虎ノ門ガーデン103
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