最近、パソコンやスマートフォンの普及により、自ら字を書く機会はめっきり減少してきました。その影響からか、「読めるけれども、いざ書こうとすると書けない漢字」が増えていませんか? 以前はすらすらと書けていたのに、と書く力が衰えたと実感することもあります。
動画を見ながら漢字の読み書きをすることで、脳のトレーニングとなります。また、この記事を通じて、読むこと・書くこと・漢字の意味を深く知り、漢字の能力を高く保つことにお役立てください。
「脳トレ漢字」第94回は、「後退る」をご紹介します。「後退」に送り仮名「る」がつくと、何と読むのでしょうか?
脳トレ漢字の動画を見ながら“読んで書く”ことで、記憶力を鍛えながら、漢字への造詣を深めてみてください。
「後退る」はなんと読む?
「後退る」という漢字、読み方に心当たりはありますか?「こうたいる」ではなく……
正解は……
「あとずさる」です。
『小学館デジタル大辞泉』では、「驚きや恐れなどのために、前を向いたままうしろへさがる」または「ためらって消極的になる」と説明されています。顔や体は前に向けたまま、後ろへ退くことです。熊などから離れる時は、背を向けず、「後退る」のが良いとされています。
ちなみに「あとじさる」も「あとずさる」と同じ意味で、どちらも「後退る」と書きます。
「後退る」の漢字の由来とは?
「後退る」を構成する漢字を一文字ずつ見ていきましょう。「後」は「おくれること」を、「退」は「後ろにさがること」を意味しています。
一般的に「退(しりぞ)く」「退(の)く」と読むことが多い「退」という字ですが、送り仮名「る」がつくと「退(すさ)る」と読みます。この場合、意味は「後方へ下がること」です。「後退る」は「後」と「退る」が合わさることで「退る」の頭音「す」が濁音になり、「あとずさる」へと変化しました。この現象は「連濁」と呼びます。
また「すさる」と同様に、「退る」は「しさる」とも読むため「後退る」を「あとじさる」と読むこともあります。
「退」を使った難読漢字「退紅」は何と読む?
「後退る」の「退」は多数の読み方があることがわかりました。では、「退紅」は何と読むでしょうか?
正解は「あらぞめ」です。「退紅」は「紅花で染めた薄紅色」を指す言葉になります。「退」の字には「あせる、色がさめる」といった「褪」と同じ意味があります。「あらぞめ」は染色名で、褪(たい)色、つまり、紅の褪せた色という意味です。衣服の色が“退”いた“紅”色であることから「退紅」と呼ばれるようになったと言えるでしょう。
また「退紅」は音読みで「たいこう」とも読みます。「あらぞめ」を「荒染」と書く場合もありますが、こちらは漢字と読みが対応していてわかりやすいですね。
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いかがでしたか? 今回の「後退る」のご紹介は皆さまの漢字知識を広げるのに少しはお役に立てたでしょうか? 一つの漢字に複数の読み方と意味が込められているのが、日本語の難しいところです。ただそのおかげで、豊かな表現を実現しているともいえます。
来週もお楽しみに。
文/トヨダリコ(京都メディアライン)
アニメーション/鈴木菜々絵(京都メディアライン)
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