取材・文/沢木文

「女の友情はハムより薄い」などと言われている。恋愛すれば恋人を、結婚すれば夫を、出産すれば我が子を優先し、友人は二の次、三の次になることが多々あるからだろう。それに、結婚、出産、専業主婦、独身、キャリアなど環境によって価値観も変わる。ここでは、感覚がズレているのに、友人関係を維持しようとした人の話を紹介していく。

亮子さん(62歳)と夫(63歳)は20年前に結婚した。束縛し合うような結婚生活の息抜きに、12年前にマンドリンサークルに入り、倫子さん(62歳)と出会う。亮子さんの生まれて初めての女友達だった。そんな倫子さんにコロナ禍中に言えなかった秘密を告白したところ、勤務先に怪文書が送られて、退職に追い込まれたという。

美しく容姿が整っているというだけでいじめに遭ってきた

亮子さんは、実年齢よりも10歳以上若く見える。芸能人のようにも見えるほど、整った顔立ちをしている。現在の夫とダブル不倫の末に結婚するまでは、大手電子機器系のメーカーの契約社員として32歳から10年間勤務していたという。

「20代の頃は、毎日のように男性からナンパされていました。ストーカーに付きまとわれたときは、毎日、両親と兄が駅から送り迎えをしてくれたほどです。最初の結婚は27歳の頃。子供も欲しかったので寿退社をしました。でも、2回流産し子供をあきらめた32歳のとき、“また働きたい”と元の会社の役員に相談したら、契約社員にしてくれたのです」

亮子さんには容姿が美しく、周囲から愛されて育った女性が持つ独特の余裕と、他者への優越感が雰囲気の一部になっている。同性からのいじめもすごかったという。

「幼稚園時代からありました。再雇用されたときは、ホントにひどかった。役員と愛人だったと陰口を叩かれたり、書類を隠されたり。ミスも擦り付けられましたね。それを見かねた上司が、男性だらけの部署に異動させてくれたのです」

そこは戦場のような営業部隊。そこで出会ったのは、現在の夫だ。夫は亮子さんに一目ボレするも、すぐに海外支社への赴任を繰り返す。出会いから10年後に日本勤務になった。そこは役員候補が配属される部署であり、夫は自信があったのだろう。すぐに、亮子さんに猛アタックする。

「その頃、私は結婚13年で子供もおらず、元夫との関係がうまくいっていなかった。それで恋愛関係になりました」

元夫は、妻・亮子さん不倫の関係を1年以上気付かなかった。

「私には関心がなかったんですよ。仕事の連続でしたから」

亮子さんの元夫も現在の夫も推しが強いエリート男性だ。高嶺の花たる亮子さんを妻にすることを無上の喜びとしていたことは想像できる。

「今の夫は、妻と離婚して私と再婚するという。しかし彼には高校生の子供が2人いたのでもめました。養育費をたっぷりと払うことで納得して離婚。42歳の時に再婚しました。私は会社にいられなくなり退職。夫は貯金の大半を元妻に渡したので、私はすぐに別の会社に就職しました。夫は会社に残ったのですが、出世ルートから外されました」

出世コースを外された夫は、そのストレスから、次第に亮子さんにあたるようになる。

「その息抜きのために、50歳のときに学生時代に本格的に取り組んでいたマンドリンのサークルに入ったのです」

【生まれて初めて女友達ができた喜び……次のページに続きます】

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