「あなたと話していると楽しい」と夫のグチを聞いてくれる

亮子さんとの略奪婚で、出世コースを外されたことは、夫にとって予想外だっただろう。企業は不倫を「自制ができない人物」と判断し、減点対象とする傾向がある。夫は会社への憎悪を抱えながらも、元妻との間に生まれた子供たちへの養育費はのしかかってくるので、転職はできない。

その憎悪は、発端となる亮子さんへと向かう。帰宅時間の報告、互いに現在地を知らせる、夜の飲み会を一方的に禁止されるなど、激しい束縛の毎日が始まった。

「残業をするたびに、男性といることを疑われる。家に帰ると、玄関にあてつけのように靴下が脱ぎ捨てられていて、わざと裏返しになっている。それをひっくり返して洗わないと“横着な女だな”と罵倒されるなど、ホントに辛かったんです」

そこで、亮子さんは、趣味を持つことにした。学生時代に打ち込んだマンドリンを再開する。ある学校施設で毎週開催されているそのサークルの部員募集のチラシを見て、夫と共に見学に行った。

「男性がいないので、夫はOKをくれました。品がいい人が多く、私を歓迎してくれました。今まで知っている人とは全然違う。マウンティングをしてこないんです。サークルになじむうちに、彼女たちの背景を聞くと、裕福な家庭に生まれ育ち、そのまま奥様になった人ばかり。優しくて温かいんです」

亮子さんはマンドリンに打ち込む。開始から2年後に、同じ年の倫子さんが新メンバーに加わった。倫子さんと好きな音楽家や映画などについて話し合ううちに、夫の束縛などの窮屈な結婚生活について語るようになる。

「倫子さんは私の夫のグチを“ああ、そうなんだ”“それは大変だね”などと、聞いてくれるんです。私が“自分のことばかり話して退屈ではない?”と言うと“あなたと話していると楽しい”と言ってくれたんです。私にとって生まれて初めての女友達。10年間、友情を育みました」

【隠していた略奪婚を話してから、態度が豹変する……その2に続きます】

取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)がある。連載に、 教育雑誌『みんなの教育技術』(小学館)、Webサイト『現代ビジネス』(講談社)、『Domani.jp』(小学館)などがある。『女性セブン』(小学館)、『週刊朝日』(朝日新聞出版)などに寄稿している。

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