関係が近いからこそ、実態が見えなくなる家族の問題。親は高齢化し、子や孫は成長して何らかの闇を抱えていく。愛憎が交差する関係だからこそ、核心が見えない。探偵・山村佳子は「ここ数年、肉親を対象とした調査が激増しています」と語る。この連載では、探偵調査でわかった「家族の真実」について、紹介していく。
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今回の依頼者・敏恵さん(仮名・60歳)は、半年前に定年退職後の夫(65歳)が、現役時代と変わらず外出を続けていることで浮気を疑い、私たちの事務所に相談にいらっしゃいました。
【これまでの経緯は前編で】
都心の単身向けマンションに入っていく
夫は敏恵さんがパートに出る朝8時には寝ている。用意しておいた食事をとり、敏恵さんがパートから帰って来る16時にはもうすでに家におらず、帰宅は敏恵さんが眠りについた深夜になる。
敏恵さんのパートがない日は朝8時には出てしまい、深夜まで帰宅しないとのこと。
そこで、敏恵さんのパートがない日を狙い、朝7時から張り込みを開始。敏恵さんが住んでいるのは、23区内郊外の高級高層マンション群です。ここは何度か調査に入ったのですが、管理組合の監視の目が厳しい。私たちは敷地全体の出入り口3か所に探偵を配置しました。
夫は7時45分に敷地から出てきました。地下鉄駅までかなりの早足で歩き、都心にある単身向けのマンションに入っていきます。
そして、昼の13時に出てきて、徒歩で向かったのは銀座の映画館。たった一人で映画鑑賞をして、再びかなりの距離を歩いて、個人営業の喫茶店へ。ママと顔なじみのようで、談笑しています。10分もしないうちに、40~50代程度の小柄でおしゃれな男性が入ってきました。
私たちも中に入ろうかと思いましたが、近くにコーヒーチェーンがあるのに、わざわざ常連だらけの喫茶店に入るのは、かなり警戒されてしまう。そこで外から待ちました。
この男性も結婚しているようで左手の薬指に指輪が光っています。マスクをはずしていたのですが、夫も男性もめちゃくちゃ楽しそうに話している。底抜けに明るい笑顔を浮かべていました。
30分ほど話して、会計をワリカンで済ませて出てきました。夫は再びマンションに戻り、次に出てきたのは19時。新宿二丁目にあるバーに入っていきました。ここは、常連以外にも門戸を開いている雰囲気で、私たちも後を追いました。
【再び、昼間の男性とカウンターで親し気に話していた 次のページに続きます】