「ヒートショック」をご存じだろうか? 家の中での急激な温度差が身体に悪影響を及ぼすことである。とくに外気温が低くなる冬場の、入浴中に襲われるケースが多い。最悪の場合、死に至ることもあるという、恐ろしい現象だ。
全国の20〜70代の男女合計900人を対象に、リンナイが行った“入浴習慣”と“入浴時のヒートショック”に関する意識調査の結果から、以下の6点が明らかになった。
(1)ヒートショック危険度数の高い“ヒートショック予備軍”は約5割にものぼること。
(2)予備軍が多いなか、対策ができている人は約3割程度であり、さらにメタボ、糖尿病、高血圧などリスクの高い人ほど対策ができていないこと。
(3)ヒートショック認知率は7割あるものの、4割がその詳細を理解していないこと。
(4)危険な「飲酒後の入浴」経験者は約6割と多数いること。
(5)42°以上の危険な入浴を行っている人が4割もいること。さらに70代が最も多いこと。
(6)約7割と多数の人が「冬場の浴室は“寒い”」と感じていること。意外にも九州が一番寒く感じていて、北海道が寒く感じていないという結果に。
こうした調査結果を踏まえたうえでぜひ知っておきたいのは、安全なお風呂の入り方だ。以下に、お風呂を医学的に研究する第一人者として知られる医師、早坂信哉氏による「快適安全入浴の五箇条」を紹介しておこう。
■1:脱衣室・浴室は事前に20℃以上に温めておくべし
過去の研究結果により、リビングと脱衣室の温度差は「5℃未満」にしておくのが安全とわかっているのだそう。仮にリビングが25℃であるなら、脱衣室の温度は20℃より高くしておくことが重要なのだ。
■2:お湯の温度は40℃以下にすべし
また、寒い脱衣室と熱い湯の温度差もヒートショックに大きく関係してくるのだという。脱衣室・浴室をあらかじめ20℃以上に温めておくだけでなく、湯の温度は40℃以下にしておくことも忘れずに。
■3:手足の先から順にかけ湯をすべし
かけ湯をして入ることは、マナーの面だけではなく、ヒートショックを避けるという意味においても大切なルーティンなのだそうだ。また、いきなり頭や肩からお湯をかけることはヒートショックの原因となるので避けたい。お湯に少しずつ体を慣らし、血圧の急上昇を防ぐためには、手足の末端から体の中心まで、順にかけ湯をしよう。
■4:飲酒後すぐのお風呂は避けるべし
飲酒後の入浴は、血圧を異常に低下させる可能性があるという。また、転んで思わぬけがをするなどの危険があることにも用心しておきたい。飲酒後入浴の危険性は全国どこでも同じなので、飲酒後の入浴は十分に酔いが覚めてからにするべきだ。
■5:お風呂の前後にコップ1~2杯の水を飲むべし
入浴すると、300〜500mlの汗をかくために、血液の粘度が高まって「ドロドロ血」になるそうである。血圧の急上昇によって血管が詰まったり破れたりしやすくなり危険なので、入浴後には水分補給をしよう。また、あまり知られていないものの、入浴前にも水分補給をするが大事なのだそうだ。ただしガブ飲みすると血圧が上がることもあるので、「入浴前後に各々コップ1程度の水を飲むこと」が理想とのこと。
いかがだろうか? ヒートショックについては、つい「自分とは関係のないこと」だと思ってしまいがち。しかし実際には、リスクは誰にでもあるものだ。冬場の入浴時には、上記の五箇条を守って、ヒートショックから身を守ろう。
【参考リンク】
※ 「⼊浴習慣」と「⼊浴時のヒートショック」に関する意識調査(PDF) – リンナイ
文/印南敦史