取材・文/ふじのあやこ
家族との関係を娘目線で振り返る本連載。幼少期、思春期を経て、親に感じていた気持ちを探ります。(~その1~はコチラ)
今回お話を伺ったのは、大阪府内で旦那さまと子どもとの三人暮らしをしている美穂さん(仮名・39歳)。兵庫県生まれで両親と3歳上に姉、5歳下に弟のいる5人家族。母親との仲を裂くような存在の弟を忌み嫌い、弟の仲がこじれていく中で弟寄りの母親には甘えられないまま、さらに距離が広がっていきます。単身赴任中の父親にもうまく甘えられずに姉との違いも感じるようになり、学生時代はずっと孤独感があったと振り返ります。
「私がいなくなっても家族の誰も悲しまないんだろなってずっと思っていました。友人が姉と洋服をシェアしていたり、母親と買い物したという話を聞くたびに羨ましかったですね。
私は母親に言われた通りに高校を卒業後にアパレルブランドの販売員に就職しました。高校ではほとんどの子が進学だったので、就職することは嫌だったんですけどこれ以上母親に嫌われたくなかったので」
「あの子とあんたは違う」。母親はその差を口にした
就職した後も美穂さんは実家から通い続けます。すでに姉が独立した後ではあったものの、家に戻ってきた父親と仲良くしたい思いがあったと言いますが……。
「年頃の娘と父親の距離感って難しいですよね。父も私の存在は気にしてくれているけれど話しかけてはこないし、私も何年も一緒に暮らしていないと親戚のおじさんみたいに気を遣う存在になっていて甘えられなくて。
実家から職場は距離があったんですが、それでも通い続けたのはもちろんお金のこともありましたが、弟が父まで取り込んで、完全に家族から外されたくなかったから。父はそんなことをしないと思いつつも、弟から何かを吹き込まれたら私のことをすぐに嫌いになってしまうんじゃないかって不安があったので」
弟は美穂さんが進学を諦めた専門学校にあっさり入学します。それに対する不満が拭えなかった美穂さんは母親に文句を言ったそうですが、酷い言葉が返ってきたと言います。
「『あの子とあんたは違う』って、弟は家のことをたくさん手伝ってくれたのに、私は何もしていないように母親には映っていたんですよね……。“違う”って言葉を聞いて、やっぱり弟だけがかわいいんだって確信できました。この言葉が家を出るきっかけになりましたね。もうこの家にいることは無駄だなって思ったんです」
【子どもにまで嫌がらせをされたことで家族と決別。次ページに続きます】