文 /市川雄一郎

投資は豊かな人生を送るためにある

誰にとっても、人生の目的は豊かで幸せに暮らすことであり、投資はそのために必要な人生の大切な営みのひとつです。お金は使ってはじめて価値を持ちます。読者の皆さんには、投資によってお金を増やし、豊かで幸せな人生を送ってほしい。これが本書に託した私の切なる願いです。
グローバルファイナンシャルスクール 校長 市川雄一郎

【教えその8】売れ筋に惑わされず、自分に合った商品選びに徹すること

最低限知っておきたい商品販売の仕組み

前項(https://serai.jp/living/1044079)のお話をもう少し補足します。

証券会社のホームページや本支店の店頭には、いろいろな「売買ランキング」が掲示されています。よく目にするのは「今月の売れ筋投資信託ランキング」あたりではないでしょうか。

証券会社や銀行などがそれぞれ独自にランキングしているもので、今どんな投資信託商品(投資ファンド※)が人気なのか、利回りはどうなのかなど、あなたの投資戦略の参考になる指標のひとつではあると言えるでしょう。

(※投資信託(投資ファンド):投資家から集めたお金をひとつの大きな資金としてまとめ、運用の専門家が株式や債券などに投資・運用する商品で、その運用成果が、投資家それぞれの投資額に応じて分配される仕組みの金融商品。集めた資金をどのような対象に投資するかは、投資信託ごとの運用方針に基づき専門家が行う。

ですが、これには注意しなければならないポイントがいろいろとあります。何よりも大事なのは、投資信託商品の「仕組み」をよく理解することです。

まずは「販売の仕組み」。一般に、投資ファンドは投資信託運用会社(アセットマネジメント会社)が設定し、証券会社や銀行などの「販売会社」が皆さんのような個人投資家や企業などに販売します。当たり前ですが、販売する度に、販売会社には運用会社から販売手数料(コミッションフィー)が支払われます。さらに、会社によってやり方はいろいろありますが、個々の営業担当者にも販売奨励策(インセンティブ)として報酬が支払われたり、運用会社から「ポイント」が付与されたりします。あなたがネット通販で買い物をしたり、クレジットカードや電子マネーを使ったりした時にポイントがもらえるのと同じようなものです。

このような仕組みが、実は売れ筋ランキングに大きく影響するのです。例えば、同じ運用会社が作った投資ファンドなのに、A銀行では上位にランクされているが、B証券ではそれより低い。あるいは、ほとんど同じテーマや銘柄で設定され、同じような運用成績を上げている投資ファンドなのに、Xアセットマネジメント社のものはよく売れているが、Yアセットマネジメント社のものはそれほどでもない。素人にはよくわからない話です。

売れ筋ランキングにはからくりがある

こうした一見不可解な現象が起きるのは、販売の仕組みの中に「仕掛け」や「からくり」があるからです。

例えば、販売会社に対する販売手数料(販売報酬)が違う場合があります。運用会社の営業戦略によっては、他社は一律2%なのに、A銀行だけ3%の手数料を支払うといったことがあるのです。この場合、A銀行は当然、この商品を売りたいと考えます。前述した「販売強化月間」で推奨される〝イチ推し商品〞はこうした商品だと考えて、まず間違いありません。会社に「売れ」と言われれば、個々の担当者も暗黙の了解で、必死で売り込みます。営業担当者にとっては、営業成績は勤務査定に直結し、ボーナスに反映されるからです。中身が類似したファンドなのに、X社のものがY社のものよりよく売れているという場合も、多分、X社の方が高い手数料(報酬)を設定しているからでしょう。

もうおわかりだと思います。業界の反発を恐れずに大胆に言い切れば、売れ筋ランキングはまさに、販売会社側が「今、売りたい」と考えている商品のランキングに過ぎないということです。だから、あまり気にすることはありません。無視しても構わないと思います。

こうした「売りたい商品を売る」という傾向は、保険代理店や、IFA(Independent Financial Advisor)と呼ばれる独立系の投信販売会社にも見られがちです。もちろん、インセンティブの誘惑に負けず「顧客第一主義」を貫く会社も数多く存在します。投資家には知識と経験を身につけて、販売会社の姿勢を見極める目を養うことが重要といえます。

投信商品には「信託報酬」がかかることをお忘れなく

投資信託に関してはもうひとつ、注意してほしいことがあります。それは、あなた自身が支払う手数料のことです。

まず買う時には「販売手数料」がかかります。この販売手数料は、投資家が販売会社に支払う購入時にかかる手数料のことです。

これは販売会社や商品によっても異なるし、インターネットで買う場合に安くなる「インターネット割」なども近年では広く普及しています。

見落としがちなのが「信託報酬」です。「運用管理費用」とも呼びます。ひと言で言えば、運用会社に支払う管理・運用の代行手数料です。

図表に投資信託にかかる手数料を簡単にまとめましたが、これにもいろいろなタイプやパターンがあります。

投資信託商品の売買に伴って発生するこうした手数料は、あなたが実際に手にする利益に直結しますから、事前によく調べておく必要があります。

以上をまとめると、要するに、他人がどんな商品を購入しているか、あるいは売却しているかなどは気にする必要はないということです。大事なのは、あなたにとって本当に必要な金融商品は何で、どのように管理・運用していくかに全力を傾けること。勧められるがままに購入したり、他人の行動を見て決めたりするのは、大切なお金を失う原因にもなり兼ねません。バカげた行動です。決してしてはいけません!


市川雄一郎
グローバルファイナンシャルスクール校長。CFP(R)。MBA/経営学修士。
日本のFPの先駆者として資産運用の啓蒙に従事。
テレビ、新聞、雑誌等のメディア活動経験も豊富。
最新の著書に「投資で利益を出している人たちが大事にしている45の教え」(日本経済新聞出版)がある。
グローバルファイナンシャルスクール(GFS)
公式サイト:https://gfs-official.com/
体験版講座:https://toushi-up.com/

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※本記事は『投資で利益を出している人たちが大事にしている45の教え(日本経済新聞出版)』より抜粋して掲載しています。

 

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