「一人暮らしで突然倒れた」「認知症が進み、日々の生活もままならなくなってきた」など、施設入所への理由は一人ひとり異なりますが、いざ手続きを進めようとすると、わからないこともたくさん出てくると思います。
また、介護保険法の改正などにより、受け入れ先の体制や方針も変化しています。入所するご本人とご家族が、事前に施設を選ぶ目をきちんと養っておくことが大切ですね。
そこで、アクティブシニアのライフサポートを行う株式会社ユメコム代表の橋本珠美が、介護保険施設の費用や施設を決めるポイントなどを、豊富な経験や事例をもとにアドバイスを申し上げます。
目次
介護保険施設とは
介護保険施設の種類
介護保険施設の費用やサービス
在宅から介護保険施設へ
介護保険施設入所までの流れ
まとめ
介護保険施設とは
介護保険サービスで利用することができる、公的な施設のことを「介護保険施設」といいます。国や地方自治体、社会福祉法人によって運営されています。国の補助金を受けて設立されていることから、民間運営の施設に比べると費用が安く抑えられるという利点があります。
介護保険施設の種類
介護保険サービスを利用して入居できる、主な介護保険施設をご紹介します。入居予定者の介護認定結果により、利用できる施設が変わってきます。
〇特別養護老人ホーム(通称 特養)…要介護3以上
〇介護老人保健施設(通称 老健)…要介護1以上
〇介護療養型医療施設(通称 療養型)…要介護1以上
〇軽費老人ホーム…60歳以上の人で身寄りがない、家族との同居が困難な人
介護保険施設の費用やサービス
それぞれの介護保険施設の費用や、主なサービスなどを見ていきましょう。月額費用の目安には食費が含まれており、費用は要介護度及び所得段階によって変動します。また、施設によって入所要件は異なるため、各施設の費用はあくまで目安の金額です。
【特別養護老人ホーム(通称 特養)】
日常生活で常に介護が必要で、在宅での介護が困難な方に、日常生活の介護や健康管理などを行います。
・月額費用の目安:8万円~15万円ほど
・入浴、排泄、食事などのサービスの提供
・4人部屋などの多床型と全室個室のユニット型
・介護度が高く必要度の高い人が優先
【介護老人保健施設(通称 老健)】
医学的管理の下での介護、看護、機能訓練、その他必要な医療などを行い、家庭での生活に戻れるよう支援します。
・月額費用の目安:8万円~17万円ほど
・在宅復帰のためのリハビリや看護、介護、機能訓練などを行う
・期間は最長6か月
【介護療養型医療施設(通称 療養型)】
長期療養が必要な方に、療養病床などの介護体制が整った医療施設で、看護、医学的管理下での介護、その他必要な医療などを提供します。
・月額費用の目安:9万円~25万円ほど
・医学的管理と看護のもとで日常生活の世話やリハビリなどを行う
・2018年4月の改正により「介護医療院」へ順時転換される
【軽費老人ホーム】
従来の住居での生活が困難な場合(家庭環境や住宅事情など)に入所でき、A型、B型、ケアハウスに分かれます。
〈A型〉
・月額費用の目安:6~17万円ほど
・食事、入浴、生活相談サービスの提供。所得制限有
〈B型〉
・月額費用の目安:4万円前後
・食事は原則自炊。所得制限はないが、施設数が少ない
〈ケアハウス〉
・月額費用の目安:6~20万円ほど
・各居室にトイレ、洗面台、ミニキッチンなどが備えられている
在宅から介護保険施設へ
ご本人の状態が悪化し、介護者の負担が大きくなると、在宅サービスから施設への入所に切り替えるケースがあります。在宅から施設へと移行するときは、在宅のケアマネジャーから施設のケアマネージャーにしっかりと引き継ぎをしてもらいましょう。
入所施設を決めるときのポイント
いざ施設に入所のなった時に、どういう基準で施設を選べばいいのか迷われる方もいらっしゃるかもしれません。ここでは、入所する施設を決める際のポイントを挙げていきます。
▷家族も含めて事前に見学する
入所を決める前に、必ずご家族で見学に行きましょう。在宅のケアマネジャーなどに任せっきりにしていると、後で考えの食い違いが出てくることがあります。また、入所する本人の意思を確認せず、ご家族だけで決めてしまうのも避けた方がよいでしょう。
▷すでに入居している方の表情を見る
施設を見学するときは、入居者の方々の表情が生き生きとしているかどうかを見ることも大切です。また、施設内が清潔かどうかや、食事はどのようなメニューを提供しているかなどを確認してみてもよいでしょう。
▷施設のケアプランを把握する
施設でのケアプランは、施設に常駐しているケアマネジャーが作成します。在宅時と変わって、どのようなサービスが受けられるのか、事前に把握し、内容をしっかり確認してから契約を結びましょう。
▷病院に勤務する医療ソーシャルワーカー(MSW)と連携する
病気やケガで入院した場合は、病院に勤務する医療ソーシャルワーカー(MSW)に相談するのもひとつの方法です。社会福祉の立場から適切な施設探しに向けて、いろいろとサポートをしてくれます。
介護保険施設入所までの流れ
介護保険施設に入所するまでの流れをご紹介します。
(1)申請
お住まいの市町村の介護保険窓口に介護保険の認定申請をします。
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(2)要介護認定
認定調査員による訪問、および医師の意見書をもとに審査・判定され、要介護度が決められます。
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(3)認定結果が出る(要介護1~5の方)
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(4)「在宅サービス」か「施設サービス」かを選択
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)に入所できるのは、原則要介護3以上の方です。
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(5)介護サービスの計画
入所を希望する介護保険施設へ申し込み、入所した施設で施設サービス計画(ケアプラン)を作成します。
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(6)サービスの契約
サービスを提供する事業者から「重要事項説明書」を受け取り、十分説明を受けて契約を結びます。
まとめ
民間施設に比べると比較的安価に利用できる、介護保険施設。施設の種類や決める際のポイント、入居までの流れなどをご紹介してきました。大切な家族が暮らす施設は、ぜひご家族皆さんで事前に見学し、話し合って決めましょう。
ご本人の状態によっては、意思の疎通ができなくなっている場合もあります。元気なうちに、「こうなったらこうする」という方針をご家族で話しておけるといいですね。
●構成・編集/ 内藤 知夏 (京都メディアライン・http://kyotomedialine.com)
●取材協力/橋本 珠美(はしもと たまみ)
2001年4月、株式会社ユメコムを起ち上げ、介護・福祉の法人マーケットを中心に、誰もが高齢社会を安心して過ごすためのコンサルティングを始める。
また「高齢者と高齢者を抱える現役世代」のための相談窓口「シニアサポートデスク」「ワーク&ケアヘルプライン」を運営し、高齢者やそのご家族の幅広いお悩み(介護・相続・すまいなど)にお応えしている。
相談窓口の事例と自身の経験(ダブルケア)を取り入れたセミナー活動は好評を得ている。
株式会社ユメコム(https://www.yumecom.com)