アメリカ東部の農家の主婦だったグランマ・モーゼスことアンナ・メアリー・ロバートソン・モーゼス(1860-1961)は、70代になり本格的に絵を描きはじめました。
身近な田園風景や日々の暮らしを素朴な筆致で描き、101歳で亡くなるまで国民的画家として愛され続けきました。

アンナ・メアリー・ロバートソン・“グランマ”・モーゼス《美しき世界》 1948年
個人蔵(ギャラリー・セント・エティエンヌ、ニューヨーク寄託)
(C)2021,Grandma Moses Properties Co., NY

「人生100年時代」が唱えられている今、心にひびく展覧会が開かれています。(6月27日まで)
本展の見どころを、あべのハルカス美術館の上席学芸員、浅川真紀さんにうかがいました。

「『私の人生は、振り返ればよく働いた一日のようなものでした』101年にわたる人生をこのように表現したグランマ・モーゼス。その言葉通り、彼女は生涯を通じて、手と身体をたゆみなく動かし続けました。農作業に家畜の世話、子育て、家事、季節の行事やお祝い事、そして最後は絵を描くことに。

アンナ・メアリー・ロバートソン・“グランマ”・モーゼス《村の結婚式》 1951年
ベニントン美術館蔵
(C)2021,Grandma Moses Properties Co., NY
アンナ・メアリー・ロバートソン・“グランマ”・モーゼス《農場の引越し》 1951年
個人蔵(ギャラリー・セント・エティエンヌ、ニューヨーク寄委託)
(C)2021,Grandma Moses Properties Co., NY

70歳を過ぎて本格的に絵筆をとり、80歳でニューヨークでの個展デビューを飾った超遅咲きのサクセスストーリーに世界中の注目が集まる一方で、本人はいたって自然体で、自らの愛した風景や素朴な田園生活を、てらいのない絵筆で描き続けました。まるで得意のジャム作りと同じように。

アンナ・メアリー・ロバートソン・“グランマ”・モーゼス《アップル・バター作り》1947年
個人蔵(ギャラリー・セント・エティエンヌ、ニューヨーク寄託)
(C)2021,Grandma Moses Properties Co., NY

たとえば、夏の終わりの季節行事を描いた《アップル・バター作り》では、村人総出で行う作業の活気と喜びが画面いっぱいにあふれています。そうした喜びとともに、101年の人生において直面してきたであろう数知れない困難をも、一貫して「よく働く」ことでポジティヴに転化してきたひとりの女性の澄んだまなざしの軌跡が、ここにはあります」

庭で絵を描くグランマ・モーゼス 1946年
写真:Ifor Thomas(ギャラリー・セント・エティエンヌ、ニューヨーク寄託)
(C)2021,Grandma Moses Properties Co., NY

人生70歳からでも遅くない!! そんな希望がわく展覧会、ぜひ足をお運びください。

【開催要項】
生誕160年記念「グランマ・モーゼス展―素敵な100年人生」 
会期:2021年4月17日(土)~6月27日(日)
会場:あべのハルカス美術館
住所:大阪市阿倍野区阿倍野筋1-1-43 あべのハルカス16階
電話:06・4399・9050
開館時間:火~金曜日10時から20時まで、月・土・日・祝日は10時から18時まで(入館は閉館30前分まで)
休館日:なし
公式サイト:https://www.grandma-moses.jp/
料金:公式サイト参照
アクセス:公式サイト参照

取材・文/池田充枝

 

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