浮世絵の「浮世」は、もとは「憂世」と書きました。中世までの厭世的な社会は、江戸時代になると庶民の台頭によって大きく変化し始めます。

日常生活が画題となり、庶民が絵を買い求め、とりわけ時代を写す鏡のような風俗画や浮世絵が大いにもてはやされました。

歌川豊広「見立蝦蟇鉄拐図」(右)
江戸時代(19世紀)静嘉堂文庫美術館蔵
歌川豊広「見立蝦蟇鉄拐図」(左)
江戸時代(19世紀)静嘉堂文庫美術館蔵

江戸時代の人々のエネルギーを肌で感じられる展覧会が開かれています。(2021年2月7日まで)

一蝶「朝暾曳馬図」
江戸時代(17世紀)静嘉堂文庫美術館蔵

本展の見どころを、静嘉堂文庫美術館の学芸員、吉田恵理さんにうかがいました。

「英一蝶『朝暾曳馬図』は、朝日が昇る頃、少年がまっすぐ前をむき、馬を曳いて橋を渡って行く様子が描かれた小さな掛軸です。けれども馬のパカパカという足音や、少年の鼻歌も聞こえてきそうだし、水面には影法師も描かれます。優しく繊細な表現だけれど、一日の始まりを、爽やかに描くことで、見る者に生きる力、希望を与えてくれる一幅です。

葛飾北斎「桜下美人図」
江戸時代(19世紀)静嘉堂文庫美術館蔵

絵画は時に、私たちを勇気づけてくれます。特に江戸時代初期の風俗画から浮世絵には、このころ経済活動を確立しつつあった現実的な庶民の活気やエネルギーが溢れています。

重要文化財「四条河原遊楽図屏風」江戸時代(17世紀)静嘉堂文庫美術館蔵

本展では、静嘉堂の誇る重要文化財『四条河原遊楽図屏風』など近世初期風俗画のほか、秘蔵の浮世絵版画を錦絵誕生以前から幕末まで通史的に展示します。さらに、明治末ごろ、海外向けに日本美術を紹介した豪華画集『浮世絵画派』(審美書院)に掲載された肉筆浮世絵を本邦初公開します。本展全出品作69点中、50点が初公開です(浮世絵版画は前期後期で総入れ替え)。 

鈴木春信「七福神遊興」江戸時代(18世紀)静嘉堂文庫美術館蔵

江戸時代の人々のエナジーをご堪能ください」

【開催要項】
江戸のエナジー 風俗画と浮世絵
会期:2020年12月19日(土)~2021年2月7日(日)※会期中展示替えあり
会場:静嘉堂文庫美術館
住所:東京都世田谷区岡本2-23-1
電話:050・5541・8600(ハローダイヤル)
開館時間:10時から16時30分まで(入館は16時まで)
休館日:月曜日(ただし1月11日は開館)、年末年始(12月28日~1月4日)、1月12日(火)
http://www.seikado.or.jp
料金:HP参照
アクセス:HP参照

取材・文/池田充枝

 

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