貯金をしない村の人たち
さあ、いよいよ楽しかったバリともお別れです。荷物を引き取りに、4日間、お世話になったホテル『ピタマハ』に戻ると、ここで働くマンデラ・恵子さん(詳しくは「バリ島の “ニュピ”を楽しむ旅その4」をご覧ください)が見送りに出てきてくれました。
バリに来て一番、心に残ったのは、恵子さんが話してくれた「大事なことは心に使う」人々のお話です。
「湿気があって暑いバリでは、すべてのものが朽ち果てていきます。物はなくなるものと考えているので、日本人や西洋人と違って、バリの人は物に執着しません。長男が5歳のとき、『アリとキリギリス』を読んであげたのですが、冬がなく飢えもない島で暮らしている子には全く理解できなかったようで、『歌って踊って暮らしているキリギリスは楽しそう』と言っていました」(笑)
家がなくても寒くて凍えることはないし、そこら中に果物がなっているので飢えることもない恵まれたバリの島。
「神様にいつも感謝して不平不満を言わず、自然と神様と人間のバランスがとれた素敵な島だと思うのです。お金がないことはつらいことではありませんし、お金があれば物ではなく心、つまり儀式、神様に使う。それがバリの人々なのです」
寒い冬の来る日本ではアリの生き方が美徳とされるのは仕方がないけれど、執着せず楽しく暮らすキリギリスの生き方がうらやましくなる。日本がちょっと窮屈に感じてきたら、今、行くべきはバリなのかもしれません。
帰りは行きと同じガルーダ・インドネシア航空で。接客マニュアルには書かれていない心からの笑顔とさり気ない気づかいが思い出されて、まだバリにいるかのように心地いいのです。
◆ガルーダ・インドネシア航空
インドネシア共和国を代表する航空会社。2014年にスカイチームに加盟し、その充実したネットワークを活かし、世界1000都市以上へのアクセスが可能に。日本発着路線には日本人フライトアテンダントが乗務。成田、関空からバリへ毎日、運航している。
取材協力:ガルーダ・インドネシア航空