文・写真/梅本昌男(海外書き人クラブ/タイ・バンコク在住ライター)

異色の経歴のシェフが作るタイ地方料理×焼き鳥。

日本食ブームのタイ。 JETRO(日本貿易振興機構)の発表によると、2022年のタイ全土の日本食レストラン数は5325店もあるそうです。そんな中でも、今、盛り上がっているのがIZAKAYA。その数369店、コロナ収束を受けて新規に開店する店が増加しています。

その人気の理由はというと……。

「日本食を愛しているから、それと日本にいるみたいだからよ! 日本が大好きだけど観光で行けるのは1~2年に1回程度、ここなら毎週日本気分を味わえるわ」と言うのはIZAKAYAにオフィスの仲間と来ていたテンモーさん。

他のお客さんに聞いてもだいたい同じ意見が返ってきました。

カラフルでド派手な看板が目印の『剣心』。

タイのIZAKAYAはそんな顧客のニーズを掴み、「これでもか!」とJAPAN風を推してきます。例えば、こちらの『剣心』というIZAKAYAチェーン。表の看板はサムライ、スモウレスラー、フジと外国人のイメージする日本がてんこ盛り。

タイにいることを忘れそうな店内。

中に入ると正にザ・IZAKAYA。確かに、日本にいる気分になれます。このチェーン、バンコク市内に5支店を持っている人気ぶり。オーナーは日本好きのタイ人だそうです。

そんな中、タイの地方料理と焼き鳥を合体させた店もあります。それが2022年10月にオープンした「ラープ・サイアブ~イサーンスパイシーBBQ」。

文化施設の屋上というユニークな立地。

“ラープ”とはタイのイサーン(東北地方)の名物地方料理の1つ。各種ミンチ肉を使ったサラダです。肉を炒め(生の場合もあり)、タイらしいパクチーなどの香草や唐辛子などと混ぜたもの。またサイアブとは串焼きのこと。IZAKAYAの焼き鳥をイメージし、串にラープを巻きつけたり刺したりして提供。ビーフやポーク、チキン、ダックなどの肉や内臓などの部位が揃います。

ビール大好きなオーナーシェフのファイさん。

オーナーシェフはイサーン出身のアーティット・ムンサーン(通称ファイ)さん。この方、面白い経歴の持ち主です。大学でアートを学び、その後、アーティストとして又イサーン独特の伝統文化の研究家として活躍してきました。この店のロゴもファイさん自身がデザイン。

ファイさんがデザインした店のロゴ。

それが何故シェフに?

「家でパーティをして、俺特製のソースを使った料理を友人たちに振る舞っていたんだけど評判が良くてね。じゃあ、店を開いてみるかと、家のあるノンタブリー県(バンコクのお隣の県)でオープンしたら人気が出たんだよ。それでバンコクに進出することにしたんだ」

実は、この店、タイシルクで有名な『ジム・トンプソン』が運営する文化施設ジム・トンプソン・アートセンターの屋上という珍しい場所にあります。というのも、イサーン芸術展覧会のキュレーターをファイさんが務めて同センターに関わりがあったから。

肝心の料理の話に戻りましょう。

じっくりと焼くので提供まで少し時間がかかる。

メニューは串焼きのみで全部で15種類。肉類は30バーツ(約120円~)、野菜類は20バーツ(約80円~)と良心的価格です。特製ダレを塗りじっくり焼いたラープ・サイアブが竹籠に盛られて出てきます。

櫛の端の色で料理が判別できる。

早速、口へ運んでみると……スパイシーな中に旨味が凝縮していて最高! これはビールにピッタリ!

野菜が串焼きの箸休めに良く合う。

また付け合わせの野菜は無料。これまたファイさん自慢の特製ダレで食べます。

「旨いだろう? 客が喜ぶ顔を見ていると俺も嬉しいんだよ」

この店、なかなかの人気ぶりでバンコクにもう1店をオープンしたそうです。

タイで進化するIZAKAYA。次はどんなユニークな店や料理が登場するのかワクワクです。

文・写真/梅本昌男
(タイ・バンコク在住ライター)。タイを含めた東南アジア各国で取材、JAL機内誌アゴラなどに執筆。観光からビジネス、グルメ、エンタテインメントまで幅広く網羅する。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」(https://www.kaigaikakibito.com/)会員。

 

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