文・写真/角谷剛(海外書き人クラブ/米国在住ライター)
ロサンゼルスを紹介する観光ガイドで必ずと言ってもよいほど登場する風景のひとつにハリウッド・サインがある。「H O L L Y W O O D」の文字が山の斜面に並んでいる白い看板のことだ。
ハリウッドは言わずと知れた映画の都であり、ロサンゼルス観光の目玉だ。ただし、ハリウッド・サインは実際には映画産業と直接の関係はない。建てられた場所もハリウッド市街からは10キロほど離れている。
映画の都を象徴し、100年の歴史を誇る、かつての広告看板
今年2023年はハリウッド・サインが誕生してからちょうど100周年にあたる。1923年にある不動産開発会社の屋外広告看板として設置されたものがその原型であるからだ。当初は「HOLLYWOODLAND」という文字が並んでいたそうだ。
1923年という年はアメリカが空前のバブル経済に沸いていた1920年代の、そのまさに絶頂期にあたる。ニューヨークではヤンキー・スタジアムが同年に開場し、その球場の第1号ホームランをベーブ・ルースが放っている。まさにイケイケの時代であり、その反面、あまり自然環境への配慮は見られなかったようだ。
ハリウッド・サインはその後の紆余曲折を経て、2005年に大がかりな修復工事が行われた。現在、我々が眺めることができる看板はその際に白く塗り直されたものだ。
ハリウッド・サインとロサンゼルス市街を眺める最高のスポット
ハリウッド・サインはロサンゼルスのあちこちから眺めることができる。そのなかでも最高のスポットのひとつとされるのがグリフィス天文台の展望台である。
グリフィス天文台は本来の目的である天体観測施設よりむしろ、ロサンゼルス市街を一望できる場所としての方が有名かもしれない。年間を通して多くの観光客が集まってくるが、その殆どは展望台での記念撮影に興じ、天文台の建物内に足を向ける人はそれほど多くないようだ。
そして、この展望台は数多くの映画の舞台になってきた。1955年公開の『理由なき反抗』ではジェームス・ディーン演じる主人公がここでナイフを手に喧嘩をするシーンがある。もっともディーンはこの映画が公開される1か月前に交通事故で亡くなった。享年わずか24歳。現在はディーンの銅像が展望台内に建っている。
1984年公開の『ターミネーター』でアーノルド・シュワルツェネッガー演じるT-800が未来から全裸で送り込まれ、服を奪うために不良少年たちを殺害したのもこの展望台である。シュワルツェネッガーの肉体に圧倒され、筋トレやボディビルを始めた元少年は多いだろう。何を隠そう、筆者もそのひとりである。
他にも、マイケル・ダグラス主演の社会派アクションドラマ『フォーリング・ダウン』(1993年公開)、ミュージカル映画の傑作『ラ・ラ・ランド』(2016年公開)など、ここでロケが行われた映画はまさに枚挙にいとまがない。天文台のユニークな建築とロサンゼルスの景観が、昔も今も映画製作者たちを引き付けるのだろう。ハリウッドのスタジオから近くて便利だ、という現実的な理由もそこにはあるかもしれないが。
グリフィス天文台の入場は無料だ。展望台にも誰でも自由に入ることができる。ただし、駐車場は有料であるし、また常に混雑していることでも有名である。当然のことながら、天文台は高台の上にあるので、スペースが限られているのだ。週末などは長い時間を車の列で待つ覚悟が必要になる。それを避けるには、タクシーやUberなどのシェアライドを利用するとよい。
体力と時間のある人なら、麓の無料駐車場から1キロほどの坂道を登っていくこともできる。ピクニックのつもりで景色を眺めながら歩くにはちょうど良い道のりだ。誇るわけではないが、筆者はいつもヒマだ。迷うことなく、この方法を取った。
グリフィス天文台
住所:2800 E. Observatory Rd., Los Angeles, CA 90027
電話:213-473-0800
公式ウェブサイト: https://griffithobservatory.org
文・角谷剛
日本生まれ米国在住ライター。米国で高校、日本で大学を卒業し、日米両国でIT系会社員生活を25年過ごしたのちに、趣味のスポーツがこうじてコーチ業に転身。日本のメディア多数で執筆。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」(https://www.kaigaikakibito.com/)会員。