文・写真/ハントシンガー典子(海外書き人クラブ/アメリカ在住ライター)
別名「ガーデンアイランド」と呼ばれる、花と緑に包まれたカウアイ。今も神話が息づく島は、映画「アバター」シリーズや村上春樹氏の小説の世界観にも通じるスピリチュアルな癒しの空間でした。
水と緑にあふれる島そのものが、聖なるエネルギーがあふれる「ボルテックス」
アメリカ国内でセドナ、シャスタ山と並ぶパワースポットと位置づけられる場所があります。それは約600万年前にできたハワイ諸島のなかでも最古の島、カウアイ。ハワイ語で「マナ」と言うスピリチュアルなエネルギーが最も宿ると伝わります。
オアフ、ハワイ、マウイなど、日本人も多く訪れる観光地化されたハワイの他島とは全く異なる、独自の波動のようなものを感じるはず。足を踏み入れた瞬間から、どことなく空気自体がみずみずしく「濃い」ように思えるのは、島全体の7割を覆う手つかずの原生林がその理由でしょうか。うっそうとしたジャングルが広がる様子は、映画「アバター」シリーズに登場する「パンドラの森」そのもの。「アバター」のほか、「ジュラシック・パーク」や「パイレーツ・オブ・カリビアン」など、多くの有名映画シリーズのロケ地となりました。
カウアイにまつわるスピリチュアルなうわさは尽きません。かつて文明を築くも海に沈んだとされる、古代レムリア大陸の記憶が残る最後の地とも。人体のエネルギーをつかさどるチャクラにたとえると地球の「第3の目」に当たり、創作のインスピレーションが湧くともささやかれています。村上春樹氏の執筆の場として知られるプリンスビルは、映画化もされた短編小説『ハナレイ・ベイ』、その舞台となったハナレイ近くにあるリゾート地。もしかすると、カウアイで書かれたという『スプートニクの恋人』『海辺のカフカ』の名作誕生に少なからず影響を与えているかもしれませんね。島自体がエネルギーの湧き出る「ボルテックス」とも言われるゆえんです。
ワイルア川流域のパワースポットを巡る
カウアイを語るうえで「雨」は外せません。雨は名産のタロイモやカウアイだけに自生する固有種など、大地の恵みを育みます。チベット聖典によれば、カウアイは「魂誕生のポータル」だそう。じつは偶然か必然か、古代ハワイアンにも同じような言い伝えがあります。ダライ・ラマ氏も同じ考えと言い、実際にカウアイを訪れているとか。その魂誕生の「子宮」とされるワイアレアレ山は、世界でもトップを競うほどの雨量を記録している、高さ1500メートル超えの聖なる山です。
ワイアレアレ山に降り注いだ雨は、長さ32キロにも渡るワイルア川へと流れ込みます。その蛇行する流域には、王族の聖地として守られてきたパワースポットが点在。なかでもよく知られているのがシダの洞窟、フェーングロットです。昔は王族の結婚の儀式が行われていた、一般の立ち入りが許されない聖域でした。この洞窟でしずくを受けると幸福が訪れると言われ、永遠の愛を誓う場所として地元のカップルに人気です。陸路ではアクセスできないものの、ボートツアーが催行しています。
ワイルア川自体が前述のチャクラにたとえられ、その「ハート・チャクラ」に当たる場所にヒンドゥー寺院が建てられています。本堂には、お告げにより御神体としてまつられることになった奇跡の石「アースキーパー」が。この高さ約1メートルもある巨大クリスタルこそ、知る人ぞ知る世界最大規模のパワーストーン! 一説によると、レムリアの時代からの地球の記憶が蓄積されており、人類が宇宙の叡智を呼び覚ます手助けをしてくれるそう。本堂に入るには儀式参加の予約が必要ですが、開館時間内であれば誰でも外から眺めることができます。クリスタルのパワーがみなぎる境内やルドラクシャ(菩提樹)の森での瞑想や散策は、ヒーリング効果も抜群です。
車道沿いに無料展望スポットが設けられているワイルア滝とオパエカア滝も訪れてみましょう。オパエカア滝の反対側に道路を渡ると、働き者の聖なる小人族「メネフネ」によりひと晩で完成したとの伝承が残る古代ハワイアンの神殿跡、ポリアフ・ヘイアウがあります。このメネフネ、普段は隠れて暮らしていますが、人が寝静まる月明かりの夜に現れて何でもひと晩で造ってしまうのだとか。ポリアフ・ヘイアウは、カウアイに残る神殿の中でも最大規模。神との交信の場で、死者の魂はこの地から旅立つと考えられていました。高台から海に注ぐワイルア川の圧巻の景観が望めます。
峡谷、海、洞窟……メネフネ伝説と心潤すカウアイの情景に魅せられて
作家のマーク・トウェインが「太平洋のグランドキャニオン」と絶賛した峡谷美で知られるのが、カウアイ西部に位置するワイメアキャニオンです。無数のハイキングコースが交錯し、思わず息をのむ絶景の数々は一見の価値があります。車で行けるカララウ展望台とプウオキラ展望台だけでも十分満足できますが、時間があればナパリコーストを見渡すアワアワプヒトレイルをぜひ歩いてみましょう。大湿原を抜けるアラカイ/スワンプトレイルも、珍しい植物にあふれる天然のガーデンに目を奪われること必至です。前述のメネフネたちはその昔、この渓谷に住み着いたとも言われています。
一方、ノースショアのハナレイ渓谷は、どこまでも続くタロイモ畑ののどかな田舎の風景に、古代ハワイの面影を感じられます。一車線の橋を越えて西へ向かうと、ノスタルジックなハナレイの街、さらに先には夏のスノーケリングスポット、ハエナビーチパークがあります。このビーチ前にパックリと口を開けるのが、マニニホロ洞窟です。その昔、メネフネたちが洞窟を掘り、その漁師頭が魚を盗む子鬼族を追い込んで退治したとの逸話が今に伝わります。
穴場と言えるのが、サウスショアのオールドタウン、コロア近くにあるマカウヴァヒシンクホール。正確には洞窟ではなく陥没孔で、多数の化石や珍しい固有種も見つかっている最大級の古代ハワイアン遺跡跡です。ハワイでカフナと呼ばれる聖職者もかつて住んでいた、カウアイ随一のパワースポット! マカウヴァヒ洞窟保護区内の泥道の路肩に車を停め、光を浴びてキラキラと輝くマハウレプビーチを横目に、案内板に沿ってトレイルを抜けると約30分でたどり着けます。突然現れる巨大な穴は、上から見ても下から見ても不思議な空間で、この世とは思えない異次元の空気感に圧倒されます。固有種の植物を繁殖させるために草食のゾウガメが飼われており、洞窟のトレイルから広場に出ると、柵の中でのんびり草をはむゾウガメに対面できます。
玄関口のリフエ空港へは、ホノルルからのフライトで約30分。まだまだ未舗装路も多いので、レンタカーを予約するなら4WDかSUVがおすすめ。日系旅行会社などによるツアーも車いらずで便利です。ハワイの他島と比べて野鳥のさえずり、愛らしいウミガメ、アザラシ、イルカ、クジラの数も圧倒的! ヒーリングスポットの宝庫、カウアイで心と体に溜まった澱を洗い流し、清々しいエネルギーに満たされてみませんか?
ハワイ観光局オフィシャルサイト:https://www.gohawaii.jp/ja/islands/kauai
ハワイアン航空オフィシャルサイト:https://www.hawaiianairlines.co.jp/island-guide/kauai
ハワイアン・アイランズ・ドットコム(英語):https://hawaiianislands.com/kauai/
文・写真/ハントシンガー典子(アメリカ在住ライター)
東京での出版・広告会社勤務を経て、アメリカ・シアトルに移住。現地の日系タウン誌編集長職を10年以上務めるほか、「サライ.jp」「@DIME」などにアメリカのライフスタイルや旅の記事を寄稿する。米企業のローカライズにも従事。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」(https://www.kaigaikakibito.com/)会員。