文・写真/永崎 裕麻(海外書き人クラブ/フィジー在住ライター)

日本から7,000km離れた南国の楽園フィジー。オーストラリアの東、ニュージーランドの北に浮かぶ島国です。約330の島から成り立ち、国土面積は日本の四国程度。人口も90万人ほどの小さな国。世界のセレブたちを魅了するビーチをもつ観光立国。日本人はよくハワイに観光に行きますよね。日本人にとってのハワイが、オーストラリア人やニュージーランド人にとってのフィジーです。

観光立国フィジーの顔であるデナラウ地区にあるSofitel Fiji Resort

そんなフィジーで特に珍重されているものがあります。一体、何だと思いますか? 日本ではプロポーズのときに「指輪」が使われることが多いかと思いますが、フィジーではコレが使われます。

答えは「マッコウクジラの歯」です。フィジー語では「タンブア」といいます。マッコウクジラが絶滅危惧種に認定されていることもあり、フィジーでは非常に希少価値の高いものになります。原則、フィジー国外への持ち出しは禁止されており、政府の特別な許可がある場合のみ、年間225本だけは持ち出しを許可されています。

我が家にあるタンブア

フィジー人の男性が結婚するとき、新婦の親に結納品としてタンブアを渡します。タンブアを持っていない男性は、親戚中をまわってタンブアをなんとか入手しようと努めたりします。

私の友人のフィジー人男性は外国人女性と婚約した際、新婦側の親に大きなタンブアを2本、渡しました。大きければ大きいほど、多ければ多いほどいいようです。

先日、近所に住む17歳の女子高生(フィジー人)に「将来、どんな人と結婚したい?」という質問をしたところ、「タンブアをくれる人」という回答でした。彼女は両親から「タンブアも用意できないような男性と結婚すると、将来、経済的に苦労するよ」としつけられています。タンブアを所有しているということは、哺乳類最大ともいえるクジラにも勝てるくらいたくましい男性だという意味もあるようです。

原則、タンブアは売買が禁止されています。ただ、現在はコロナ禍ということもあり、観光業に従事していた多くの人々が失業してしまったので、生活費に困った方々がやむにやまれずタンブアを売りに出していることもあると聞きます。長さ15cmほどのものが数万円の価値があるそうです。フィジーの最低賃金は時給140円程度ですから、やはり高級品ですね。

フィジーではタンブアをいろんなところで見かけます。たとえば、マクドナルドの壁面にガラスケースに入れて展示されていたり、フィジーの20セント硬貨や50ドル札にも描かれています。また、フィジーのナショナルフラッグキャリアであるフィジーエアウェイズの会員クラブの名前は「タンブア・クラブ」です。タンブアはフィジーのプロダクトに高品質なブランディングイメージをもたせています。

タンブアが描かれている20セント硬貨と50ドル紙幣

もともと、フィジーでタンブアを獲得する手段は、海辺に打ち上げられたマッコウクジラからもぎ取るか、隣国トンガとの貿易を通じてか、に限定されていました。その後、世界中で象牙(アイボリー)を代表例として、動物の歯や牙の市場ができ、フィジーにも流入するようになりました。

現在、タンブアは結納品として以外にも、葬式や式典での最高級の贈答品として、また、村と村の間の争いを収めるためなどにも活用されています。

私自身も妻(日本人)にプロポーズするときに、フィジーのしきたりにならって、タンブアを使いました。当時、妻はその文化を知らず、タンブアを見せたときにキョトンとしていました。それでも無事に結婚を承諾してもらえたのはもしかしたらタンブアの力なのかもしれません。

文・写真/永崎 裕麻(海外書き人クラブ/フィジー在住ライター):100カ国を旅し、フィジーへ移住して15年目。著書に「フィジーの非常識な幸福論」。在フィジー英語学校カラーズ校長。「南国ライフスタイルLABO」運営。日本・フィジーにデンマークを加えた世界3拠点生活(トリプルライフ)中。海外書き人クラブ会員(https://www.kaigaikakibito.com/

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