艶やかな色漆で晩酌を彩る繊細な筆使いと布目模様が美麗
大正1(1912)年創業の「マルサ漆器製造所」で作られる製品は、独特な形状やデザインが唯一無二と評判が高い。御年90歳の3代目・佐藤信夫さんと、その息子で漆芸家の4代目・達夫さんが、デザインから木地作り、塗り、蒔絵までの全工程を手がけている。
紹介するのは、鮮やかな天然漆が映える片口とぐい呑み。どちらも40~50年乾燥させて耐久性を高めた会津産の欅(けやき)を使用し、成形した木地に本漆を塗って仕上げる。
片口の成形は、本体と注ぎ口に分けて行なう。それぞれ必要な大きさに切り出した木材をろくろでくりぬき、丁寧に接合していく。
「内側には、麻布を糊漆で貼り付けて強度を高める『布着せ技法』を施しました。布の上から色漆を塗り重ねることで生み出される、表情豊かな布目模様も魅力です」と、達夫さんはこだわりを語る。
本体は片手でも持ちやすい形状で、天然木のぬくもりが感じられる。注ぎ口はやや上向きに作られ、酒の切れがよいのも至便である。
ぐい呑みは片口同様に成形した後、職人が3色の漆でひと筆ずつ模様を描き、趣を添えて作り上げた。縁は外側にやや反りかえった端反という形状で、酒の香りをはっきりと楽しむことができる。
漆の艶は使い込むほどに増す。ふだんの酒がより旨く感じられる、とっておきの酒器である。
【今日の逸品】
うるし三彩端反酒器とうるし布目塗り片口
マルサ漆器製造所
11,000円~(消費税込み)