2019年、100歳で世を去った日本画家の堀文子さん。新作を目にすることはもう叶わないが、堀さんの生き方や残された絵は、今もなお、感動を与えてくれる。

堀さんは、自身の年齢を気にすることなく、常に新しいことに挑戦し続けた。「命といふもの」の連載もそのひとつだ。本誌『サライ』にて連載を始めたのは、86歳の時のことである。

自身の絵に、折々の思いを言葉として添える。編集部は当初、これまで描いた絵に文章を付けることを想定したが、堀さんは断った。《今まで、心にしみていながら絵にしなかったものが、私には山ほどある。それをこの小さな舞台に引き出すことにしよう》(『堀文子画文集 命といふもの第1集』)

今まで誰も描かなかった絵を描きたい。堀さんのその思いが結実したのが、この連載だった。ここには新鮮な驚きがある。「これを機会に、どこにも描けなかったテーマに向き合いたい」と、一作ごとに熱中した。

今回、特別に連載のために描かれた一点ものの日本画の原画や、珠玉の作品の複製版画を購入することができる。ぜひ堪能していただきたい。

日本画家 堀 文子(ほり ふみこ)

1918年、東京・麹町区(現・千代田区平河町)生まれ。女子美術専門学校(現・女子美術大学)卒業。海外を放浪し、帰国後に神奈川県大磯に居を構える。2004年より亡くなる2019年まで、『サライ』にて「命といふもの」を連載。享年100。

堀文子 墨絵の世界 『芒が原』額装|堀文子が墨絵に込めた想い

【芒が原】
秋の季語にもなっているススキをモチーフにした墨絵『芒が原』。仙石原(神奈川県)のススキを描いた作品だろうか。

戦後、堀さんは新聞や雑誌の挿絵の仕事を精力的に手がけていたが、いつも「この仕事が私の絶筆になるのかもしれない」との思いでカット一枚にも全力で向かった。色鮮やかな作品だけでなく、ここで取り上げた墨と金泥で描かれた精神性の高い作品も堀さんの芸術の真骨頂である。掲載作品はどれも、一点ものの墨絵である。

【堀文子 略年譜】
西暦1918年 大正7年 0歳 7月2日、東京で中央大学教授・堀竹雄の三女として生まれる。
西暦1936年 昭和11年 18歳 女子美術専門学校(現・女子美術大学)入学。日本画を学び、在学中に21歳で第2回新美術人協会展に初入選。
西暦1940年 昭和15年 22歳東京帝国大学(現・東京大学)農学部で農作物の記録係を務める。
西暦1946年 昭和21年 28歳 両親の反対を押し切り、外交官・箕輪三郎と結婚。
西暦1952年 昭和27年 34歳 上村松園賞を受賞。
西暦1955年 昭和30年 37歳 この頃から病身の夫や家族の生活を支えるため、挿絵や絵本に取り組む。
西暦1961年 昭和36年 43歳 前年の夫の死をきっかけに初の海外旅行へ。エジプトや欧州、メキシコなどを3年かけて回る。
西暦1965年 昭和40年 47歳 初の個展「堀文子作品展」を日本橋髙島屋で開催。
西暦1967年 昭和42年 49歳 都内から神奈川県大磯町へ転居。
西暦1974年 昭和49年 56歳 多摩美術大学教授に就任。
西暦1979年 昭和54年 61歳 長野県軽井沢町にアトリエを構え、大磯町と行き来する。
西暦1987年 昭和62年 69歳 イタリアのアレッツォ郊外にアトリエを構え、日本と行き来する(約5年間)。
西暦1995年 平成7年 77歳 ブラジルのアマゾン、メキシコのユカタン半島へ取材旅行。
西暦1999年 平成11年 81歳 幻の花ブルーポピーを求めてヒマラヤへ。
西暦2004年 平成16年 86歳 『サライ』で「命といふもの」の連載が始まる。
西暦2019年 平成31年 100歳 2月5日没。享年100。

堀文子 墨絵の世界 『芒が原』額装

【今日の逸品】
堀文子 墨絵の世界 『芒が原』額装

ナカジマアート(日本)
550,000円(消費税込み)

堀文子さん直筆の小さな表札が来訪者を出迎える。
画廊ナカジマアート「堀文子の部屋」

東京・銀座にある画廊・ナカジマアートが運営する「堀文子の部屋」。その名の通り、堀さんのオリジナルグッズや堀さんの版画を展示・販売している。全国各地から、ファンの来訪が絶えない。

堀さん直筆の表札
画廊ナカジマアート「堀文子の部屋」。東京都中央区銀座5-5-9アベビル5階 Tel:03・3574・6008 営業時間:11時〜18時30分 料金:無料 休廊日:日曜 アクセス:地下鉄銀座駅より徒歩約3分

原画・墨絵のご注文について

ご紹介している作品のお支払いは、銀行振り込みでの前払いのみ。代引き、カード決済不可。ご注文後、小学館LIFETUNES MALLより詳細をご案内いたします。ご入金確認後、ナカジマアートより、直接ご送付希望先へお届けに伺いますが、ご希望されない場合、宅配便の対応も可能です(弊社の都合で宅配便での対応になる場合もございます)。日時の相談などは、担当者より直接ご連絡いたします。

取材・文/角山祥道 撮影/植野製作所
※この記事は『サライ』2023年6月号より転載しました。

 

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