2019年、100歳で世を去った日本画家の堀文子さん。新作を目にすることはもう叶わないが、堀さんの生き方や残された絵は、今もなお、感動を与えてくれる。
『サライ』で長期連載。「命といふもの」の世界
堀文子さんは、自身の年齢を気にすることなく、常に新しいことに挑戦し続けた。「命といふもの」の連載もそのひとつだ。本誌『サライ』にて連載を始めたのは、86歳の時のことである。
自身の絵に、折々の思いを言葉として添える。編集部は当初、これまで描いた絵に文章を付けることを想定したが、堀さんは断った。
《今まで、心にしみていながら絵にしなかったものが、私には山ほどある。それをこの小さな舞台に引き出すことにしよう》(『堀文子画文集 命といふもの第1集』)
今まで誰も描かなかった絵を描きたい。堀さんのその思いが結実したのが、この連載だった。ここには新鮮な驚きがある。
「これを機会に、どこにも描けなかったテーマに向き合いたい」と、一作ごとに熱中した。
連載の原画を特別に販売
『桜桃とアスパラガス』
堀さんにとって、描くことは「見極める」ことだった。貝殻の模様のひとつひとつ、アスパラガスの茎の一本一本を見つめ、そのどれもが同じでないことに驚き、かつ命を形作っている、その精巧な美しさに驚嘆した。
16年間、100歳まで続いた「命といふもの」の連載は、最晩年の堀さんを代表するものとなった。今回、特別にその原画を購入することができる。
作品はむろん一点もの。『桜桃とアスパラガス』に描かれた繊細な筆遣いや鮮やかな色彩を、ぜひ堪能していただきたい。
『桜桃とアスパラガス』額装
ナカジマアート(日本)
330万円(税込み価格)
画寸縦18.5×横36.5cm 額寸縦36.3×横54.2×高さ4.0cm
堀文子さん直筆の小さな表札が来訪者を出迎える。
画廊ナカジマアート「堀文子の部屋」
東京・銀座にある画廊・ナカジマアートが運営する「堀文子の部屋」。その名の通り、堀さんのオリジナルグッズや堀さんの版画を展示・販売している。全国各地から、ファンの来訪が絶えない。
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取材・文/角山祥道 撮影/植野製作所
※この記事は『サライ』2023年6月号より転載しました。