堀文子の仕事 『命というもの』原画展 開催記念
11月15日、東京・銀座の三笠会館で、俳優・檀ふみさんとサックス奏者・坂田明さんの特別対談が行われた。テーマは「日本画家・堀文子」。実は檀さんは、「堀文子、最後の弟子」。坂田さんは「ミジンコ研究仲間」であった。生前の堀さんをよく知る二人は、いったい何を語ったのか。特別対談の一部を紹介する。
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檀「堀先生の自画像じゃないかって思ってる絵があるんです」(と「オオカミウオ」の絵を見せる)
坂田「先生だよ、これは!」
檀「一度ね、この絵を見た若い方が、“わー、カワイイ”と口にしたんです。そしたら先生、烈火の如く怒って、“カワイイとは何事です!”って。それは威厳がありました。先生はカワイイも嫌いだし、笑うのも嫌い。“笑うのは嫌いでございます”って言ってましたからね」
坂田「先生らしいね」
坂田さんからは、堀さんの描いた「蜘蛛の巣」までもが、「先生に似ている」という指摘が飛び出した。
檀「蜘蛛の巣が先生? ははははは。私たち、堀さんという蜘蛛の巣に捕まっちゃったの?」
坂田「うん、捕まってるね」
檀「先生、お手伝いさんにも庭師の方にも“蜘蛛の巣を払わないでください”って厳命してましたからね。私が大磯のアトリエにお邪魔したときも、蜘蛛の巣に霧吹きで水を拭きかけて“綺麗でしょ?”って」
坂田「大磯のアトリエと言えば、庭に甕(かめ)があるでしょ? あの中に、ミジンコがいるんですけど、あれ、私が住まいをしつらえたんです。今も生きているはずですよ」
檀「先生、ヒマラヤに実際に赴いて、ブルーポピーを書きましたでしょ? 可憐な青い花ですが、刺がたくさんある。あの刺も先生(笑)。あんな素晴らしい絵でしょ? 欲しいという人はあとを絶たなかったんだけど、先生、“あの感動は易々と絵にできない”ってお描きにならなかった。ひどいと思いません?」
坂田「そりゃそうですよ。僕もヒマラヤにいったからわかるけど、あそこに81歳で行ったというのが信じられない。切り立った崖を馬に乗って行くんですけどね、前に大きな石があると、馬が突然、跳ぶんだよ。何度も死にかけたね」
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この日、集まった聴衆は抽選に応募し当選した60人。同時にオンラインでの視聴もあり、多くの堀文子ファンが、二人の特別対談を堪能した。亡くなって3年経つが、日本画家・堀文子の魅力は、いまだに褪せない。
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『命といふもの 堀文子 画文集』
『命といふもの 堀文子 画文集 第2集 無心にして花を尋ね』
『命といふもの 堀文子 画文集 第3集 名もなきものの力』
取材・文/角山祥道