北陸新幹線開業を3月14日に控え、終着駅のある金沢が注目されている。日本三大名園のひとつ兼六園や近年復元整備が進んだ金沢城など定番の観光スポットはもちろんのこと、加賀友禅、九谷焼、和菓子、漆器など伝統的な文化の香りが漂う街並みは、前田家百万石の歴史の深さを感じさせてくれる。
『サライ』2月号では、金沢が生んだふたりの文豪、泉鏡花と室生犀星の足跡を辿ったが、ここでは、金沢三大仏のひとつ蓮昌寺の釈迦如来立像を紹介したい。泉鏡花の小説『縷紅新草』の中で「仙晶寺」として登場する蓮昌寺は、加賀藩主の墓地のある卯辰山寺院群にある。元禄時代造立の仏像は、木彫りの丈六仏(4.85m)。ガイドブックなどにはあまり大きく取り上げられていないため、訪れる人はそれほど多くはない。静かな仏殿で丈六の釈迦如来を仰ぎ見れば、新たな金沢の魅力を発見できるに違いない。
『サライ』2月号では、金沢特集のほかに、直木賞作家・安部龍太郎さんの好評連載「半島をゆく」で、同じ石川県の能登半島巡りの模様も掲載されている。俗に「加賀百万国」といわれるが、実際は加賀、能登、越中3国にまたがる「加能越百万石」。それぞれの文化の違いを双方の記事で比べてみていただきたい(写真/宮地工)。