サライ1月号大特集の本編は「写真とイラストで一目瞭然 神の社の歩き方」。
鳥居、手水舎、注連縄、社殿など、私たちが神社の境内で目にする構成物を、その歴史や意味合いを含めて豊富な写真と解説文で紹介している。祈りを捧げる場である神社には、実に様々なものがあり、何気なく目にする物に、深い意味と歴史があることに改めて気づかされる。そのひとつが「狛犬」だ。
鳥居のそばや拝殿の手前に、まるで番犬のように置かれている狛犬の像。通常、左右一対を合わせて「狛犬」と称するが、向かって右側は「獅子」であることをご存じだろうか。多くは、まるで咆哮するかのように口を大きく開けた姿で造られる。これは阿吽の「阿形」とされ、口を閉じている左側(狛犬と呼ぶ)の像と合わせて「阿吽」を表現している。阿は五十音の始まりの「あ」、吽は「ん」、宇宙の始まりと終わりを表すといわれる。ちなみに、古い時代の左側の像には角のあるものがしばしは見受けられる。
狛犬の起源は古代オリエント。中国、朝鮮半島を経て、日本に伝わったとされるが、成立過程は複雑で、現在でもわかっていないことが多い。平安時代頃には、日本でも木造狛犬が制作され、現在も文化財として残されている。中世から近世にかけて石造や陶製の狛犬も現れる。現在、私たちが神社で目にする狛犬は耐久性のある石造のものが多く、その表情はそれぞれ個性的だ。神社を訪れる際には、境内の狛犬をじっくり観察してみるのも楽しい(写真/宮地工)。