なぜ部下とのコミュニケーションに変化をつける必要があるのか?

コミュニケーションが重要である、というのは、誰しも思うことであろう。だが、コミュニケーション能力を高めるにはどうしたらよいのか? リーダーシップとマネジメントに悩む、マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研」では、コミュニケーション能力を高めるためには、変化をつけることが重要である、と説く。その理由を知ろう。

* * *

コミュニケーション能力を高める最善の方法は、方法を捨て続けること。

コミュニケーション能力は出世や年齢とともに“頭打ち”になりやすいスキルかもしれません。あなたの地位が上がると、入社した頃に比べれば、慎重に言葉を選ばなければいけない場面は減るからです。

そうした環境で、コミュニケーション能力にさらに磨きをかけるためには、一体どうすればよいのでしょうか。

大切なのは部下との会話です。日常触れあう機会が一番多い部下と会話をする時に、あえて仕事の話をしないようにしたり、あえて聞き手に回るようにしたり、「ワンパターン」になることを意識的に避けることなのです。そういった「変化への心がけ」は、チーム自体の活性化にもつながりますし、チーム外の人間とのコミュニケーション能力の向上にもつながります。

ここではまず部下とのコミュニケーションに変化を付ける重要性について詳しくお話します。それから変化を付ける具体的な方法をご紹介していきます。

なぜコミュニケーション能力を高めるために、「変化」が重要なのか。

まず、コミュニケーションに変化をつけて部下と接することがなぜ大切なのかということについてご説明していきましょう。
利点は3つです。

部下とのコミュニケーションに変化をつける利点その1――「改悪」はない。変化はチームの生産性を上げる。

ベストセラーのビジネス書『仕事は楽しいかね?』では、「ホーソーン効果」という法則が紹介されています。[1]

とある工場で行われた実験なのですが、工場の明かりを通常よりも明るくしたら生産性が上がったそうです。しかし一方で、電気を暗くしても生産性が上がったという結果も出ました。つまり「結局どんなことであれ、日常と違うことをすると生産性が上がる」ということです。

事実上「改悪」はない。「試す」「挑戦する」ことによって仕事が楽しくなり成果につながるのだ、という主張です。

そしてあなたの日常の職場でのコミュニケーションも、変えることによって生産性が上げられます。

あなたがコミュニケーションに変化をつければ、おのずから相手の部下も変化をつけて受け答えをしなければならなくなります。おのずと部下達も変化せざるをえなくなる。すなわちコミュニケーションが「工場の明かり」に相当する役割を果たして、チーム全体の生産性も向上させることができるのです。

部下とのコミュニケーションに変化をつける利点その2――部下に不要なレッテルを貼ったり、部下から貼られたりすることを避けられる。

極力様々な話題で部下と接するように心がけておけば、当然あなたは部下の様々な性格や人柄を知るようになります。一方的に決めつけて枠にはめてしまうようなことも減り、最適な仕事を割り振ることもできるようになります。もちろん逆に部下の方も、あなたを単なる上司としてではなく、人間として慕うようになるはずです。

会話に変化をつけることができていれば、一緒に仕事をする時間が長ければ長いほど、協力関係は強固になるのです。

部下とのコミュニケーションに変化をつける利点その3――コミュニケーションの武器が増え、上司や社外の人間とのコミュニケーション能力も高まる。

部下との会話で変化を心がけておけば、コミュニケーションの武器は日常的に増えます。だからあなたの上司や、顧客など社外の人物とのコミュニケーションもより簡単になります。

重要人物とのコミュニケーションは慎重に行い、見知った人物とのコミュニケーションでは力を抜くという姿勢は、社会的信頼をまだ十分に得られていない若手のエネルギー配分と言えるでしょう。

ある程度コミュニケーション能力を身に付けているならば、エネルギー配分は、実は逆にすべきなのです。

コミュニケーションに変化をつけるには一体どのようにすれば良いか?

とはいえ毎日毎日変化をつけることは簡単なことではありません。他にも仕事がありますし、立場上考えなければいけないことも山積みでしょう。
そこでここではコミュニケーションに変化をつける方法を3つ、ご紹介します。

コミュニケーションに変化をつける方法その1――テクニックを学び、テクニックを捨て続ける。

コミュニケーションに関する本はたくさんあります。

その中で様々に説明されているテクニックは、どれも効果的な方法なのですが、前述の「ホーソーン効果」という視点から考えると、結局のところそれが効果を発揮している本質的な理由は、「普段と違うことをしているから」という面もないことはない。テクニックそれ自体に効果があるというよりも、本当は、あなたが「普段と違うことに挑戦しているから」効果があるとも考えられます。

だから「聞き上手」のテクニックで成果が上がると「そうか“聞き上手”を心がければもう大丈夫だ!」と思いがちですが、間違いなく、すぐにまた成果が出なくなっていきます。「あれ、ちゃんと“聞き上手”を心がけているつもりなんだけどな……」となって、そして違う“聞き上手”の本を買う、というような行動に走ってしまいます。

それらのテクニックはあくまで「変える」アイディアの一つ。実践できるようになったら、それで満足せず、あっさり捨てて、また新しいテクニックの模索をはじめなければいけないのです。

本当に普遍のテクニックといえば「変えること」だけなのです。

コミュニケーション変化をつける方法その2――最初に頭に浮かんだことを、喋らない。

最初に頭に浮かんだようなことをしゃべらないようにしておくだけでも、コミュニケーションに変化をつけられます。
例えばいつも部下と仕事の話しかしていないならば、部下の顔を見た瞬間、出すべき指示のことや、仕事の進捗確認などが頭に浮かぶのではないでしょうか。

そこをあえて捨てて、次に思いついた話題で喋ってみる。普段とちょっと違う話をしてみる。変えようという意識をちょっと持つだけで話題は案外見つかるはずです。そして変えると、相手の反応も明らかに普段と変わることに面白味を感じるはずです。

コミュニケーションに変化をつける方法その3――ちょっとした理由さえ添えれば、実は「ペットの話」ができない場面はほとんどない。

突然新しい話をはじめることに抵抗を感じる方もいるかもしれません。

例えば普段仕事の話しかしていない人が、急にペットの話をはじめたら、だれもが違和感や不信感を抱くことでしょう。

しかしちょっと理由を添えるだけで、簡単に話題の“唐突さ”“怪しさ”というものは薄められます。というのも、人には、理由とセットにされると違和感を感じにくくなるという行動原理があるためです。たとえば、コピーの行列に割り込ませてもらうようなお願いをする時に、ただ「割り込ませてもらえますか?」と言うと、ほとんど断られます。しかし「急いでいるので」という一言を入れるだけで、断られる回数は激減するのです[2]。

そこで新しい話題をはじめる時も、同じように「なぜその話をするのか」という理由を添えるように心がけ、違和感を感じにくくすればよいのです。

例えば、外を大きな犬が散歩している様子がふと目に入った直後ならば、ペットの話をしても不自然ではありません。「そういえばうちで飼っているのもさ……」と切り出せば、違和感はなくなります。慣れないうちは話題を最初に用意して、逆に理由を見つけ出しても大丈夫です。

「そこまでして、わざわざペットの話をする必要あるか」と思うかもしれませんが、しかしビジネスの現場では、大なり小なり切り出しにくい話を、切り出さなければいけない場面はたくさんあるはずです。

いや、「切り出しにくい話をスムーズに進められること」こそがビジネスコミュニケーションの本質とさえ言えるでしょう。

だからこそ日頃から、ほんの数秒だけの会話でよいので、害のない話題を使ってトレーニングをしておくことはとても有益なことなのです。

まとめ

以上今回はコミュニケーション能力を高める方法として、部下との毎日のコミュニケーションに変化をつけるという方法をご紹介いたしました。

それほど極端に変化させる必要はなく、最初に頭に浮かぶことを話さないように心がけるだけでも十分です。それだけでも毎日続けていれば、十分コミュニケーション能力は高めることができます。しかもこの方法ならば、単にコミュニケーション能力が向上するだけではなく、毎日の仕事に刺激や面白味が出る上に、チーム全体の成果も上がっていくのです。

【参照】
[1]『仕事は楽しいかね?』(きこ書房)デイル・ドーテン(著),野津智子(翻訳)
[2]『影響力の武器[第三版]:なぜ、人は動かされるのか』ロバート・B・チャルディーニ(著),社会行動研究会(翻訳)

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いかがだっただろうか? コミュニケーションは重要だということは日々感じることだと思うが、変化をつけるだけでコミュニケーション能力を高めることができる、というとがおわかりいただけただろうか。

引用:識学総研 https://souken.shikigaku.jp/

 

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