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ペットロス症候群からの回復は、ただただ、ともに悲しみ、ともに泣き、笑うこと

当時は“ペットロス”という言葉を知らなかった。調べてみると2000年ごろから注目され始めた言葉のようで、ペットが亡くなったことをきっかけに発症する、精神的、身体的な症状で、ペットロス症候群と呼ばれている。近ごろはペットロスについてさまざま雑誌で特集が組まれ、書籍も発売されているのでペットを飼う方には浸透している言葉だ。

母がペットロス症候群になったとき家族にはマニュアルは無かったけれども、ムクを知っている人間がきちんと話を聞き受け止めて、いっしょに悲しみ、楽しい思い出をシェアし合ったことは、間違っていなかったのだと思う。

そして母のペットロスを通じて、バラバラだった家族の足並みがそろったような気がした。そもそも母がどっしりと我が家にいてくれたから、私たちは各々好き勝手に自分の道を歩むことができたのだろう。

ムクがいなくなってから20年が経ったが、今でも母は「あー、ムクちゃんを抱きしめたい!」と言う。外出先で犬を散歩している人を見かけると、すぐに声をかける。

「かわいいねー、いくつなの? お名前は?」

ムクが猫であろうが、自分より何倍も大きな犬であろうがシッポを振って無邪気に近づいていくようになったのは、やはり、母のせいだったのかと改めて思う。

数年前、終の棲家として選んだのは、母の実家近くのマンションだった。そのマンションは2棟あって、一棟はペット禁止で、一棟はペットを飼ってもよいマンション。母が選んだマンションはペットOKのマンションだ。そこに住んでだいぶ経つのにいまだにペットを飼っていない。実家のマンションの玄関には犬のステッカーが貼られ、玄関を開けるとムクの写真が飾られている。

「どうして飼わないの?」

と何度尋ねても返ってくる回答はいつも同じ。

「なかなかね~。みんなかわいいんだけどね~」

いまだ、母の心を独占しているのは、ムクなのかもしれない。

文・鈴木珠美
カーライフアドバイザー&ヨガ講師。出版社を経て車、健康な体と心を作るための企画編集執筆、ワークショップなどを行っている。女性のための車生活マガジン「beecar(ビーカー)https://www.beecar.jp/ 」運営。

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