「親よりも1日でも長く生きる」

幸子さんは元夫には病気で辛い思いをしていることを伝えられたが、両親に弱音を吐くことはできなかったという。

「子どもが死ぬ恐れのある病気に罹って、見た目も変わってしまった。両親はそれだけでショックを受けているはずです。それに加えて、離婚というショックも与えてしまった。それなのに、私が弱っている姿を見せれば、両親は必死に辛い思いを隠して私を支えようとするでしょう。

でも、それが嫌だったんです。大人になった私が両親を支える立場だと思っていたから。私は離婚後すぐは実家に戻ったのですが、治療がひと段落した後はすぐに働き始め、家を出ました」

そこから普通に生活をしていた幸子さんだったが、10年後にがんが再発。これ以上心配させたくない思いから、両親に再発したことは言えなかったそう。

「区切りと言われる5年を過ぎて、投薬治療も10年で終了し、すっかりいつも通りの生活に戻っていました。その矢先のことです。傷口の拘縮だと思っていた箇所に実はしこりが隠されていて、再発していたんです。

再発したことを、両親に言えませんでした。だから、保証人には当時付き合っていた男性にお願いしました」

幸子さんは再発してから死を意識するようになった。そこから、幸子さんの目標は「親よりも1日でもいいから長生きすることになったという。

「再発したことで、死をリアルに感じるようになりました。エンディングノートを買って、様々なパスワードを記したり、過去に書いていた日記などを捨てたり……。

子どもにとって一番の親不孝は親よりも早く死ぬこと。一人娘の私は、絶対に親よりも長生きしないといけないと思いました。この思いがあるから、再発後の治療にも気丈に対応できたと思っています」

自分の状況よりも、仕事が手につかなくなるほど深く傷ついたものとは。【~その2~に続きます】

取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。

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