取材・文/ふじのあやこ

一緒にいるときはその存在が当たり前で、家族がいることのありがたみを感じることは少ない。子の独立、死別、両親の離婚など、別々に暮らすようになってから、一緒に暮らせなくなってからわかる、家族のこと。過去と今の関係性の変化を当事者に語ってもらう。
*
株式会社AlbaLinkは、「実家が事故物件になるかもしれないと感じた瞬間に関する意識調査」(実施日:2025年5月27日~6月10日、有効回答数:実家から出て暮らしている451人(女性296人/男性155人)、インターネット調査)を実施。同調査にて、「実家が事故物件になるかもしれないと感じた瞬間」を聞いたところ、1位は「親が一人暮らししている(10.6%)」となり、「親が高齢(8.0%)」、「身近で孤独死があった(6.9%)」と続いた。次いで、「実家の事故物件化を防ぐためにどのような方法をとっているか」と聞いたところ、「連絡をとる(44.6%)と回答した人が最も多く、僅差の2位は「様子を見に行く(43.5%)」だった。
今回お話を伺った幸子さん(仮名・43歳)は、30歳になる直前でがんを患い、そこから10年以上経った41歳で再発。再発したことで自分の死を感じるようになり、そこから、幸子さんの目標は「親よりも1日でもいいから長生きすることになったという。【~その1~はこちら】
親の老い、死をリアルに感じ、自分の死以上の恐怖を感じた
再発したことは親には隠し、手術と入院を終えた。再発なので、新薬を試すことになり、髪の毛にあまり影響がないものを2年間服用することに。副作用がきつい時期もあるが、なんとか乗り切っている毎日だったとのこと。その間に母親の病気が発覚し、1人で生活を続ける父親のことを考え、しばらく実家に帰省することになったという。
「母親の病気がわかって、入院、そして手術をすることになりました。そのとき私はまだ投薬中で、副作用として酷い下痢症状があったんです。何度もトイレに駆け込んだりしていたのですが、母親の入院によって高齢の父親に1人で家で生活してもらうわけにはいかないので、一時帰省をしました。仕事は新型コロナによって在宅勤務に切り替えていたので、問題なかったのですが、下痢症状はいざというときのために処方されていた止瀉薬(下痢止め)を毎日のように服用して、なんとかしていました」
母親の手術は無事成功し、退院することに。そのときに高齢になった親の姿を改めて実感し、強い恐怖感に襲われるようになったと当時のことを振り返る。
「退院後に母親の老いに対するネガティブな発言が増えたんです。『1人で行動できるうちに死にたい』とか、『年を取ると何をするにもしんどい』といったようなことを私が何か手伝う度に言われるようになりました。
父親とは、大人になってから初めて生活を共にして、何もせずにぼーっとテレビを見ている姿とか、何かをしていても『ボケ防止のため』と言う姿を見て、ちょっと悲しくなってしまって……。
私の目標は親よりも1日でも長く生きること。親の死が現実になるかもしれないと思うと、自分の死や目標を見失うことの恐怖も重なって、不安定になってしまいました」
不安定さを親に見せられなかった幸子さんは、母親が退院してしばらくして家に戻る。家に戻ってからは、仕事が手につかなくなり、日常生活がままならないほどの状態に陥ったという。
「仕事の納期に間に合わせることができなくなり、吐き気やめまい、異常なほどの発汗を伴うようになり、最後には病院に通って仕事を休職することになりました」
【未来の不安よりも、今を精一杯幸せにする。次ページに続きます】
