今年は関東大震災から100年となります。9月1日の「防災の日」に合わせて、セコム株式会社は、全国の20歳以上の男女500人を対象に「防災に関する意識調査」を実施しました。その結果、水害に対する危機意識が5年前に比べて高まったと回答した人が96.8%にのぼることがわかりました。その一方で、防災対策をしていない人は57.4%で、半数以上が具体的な対策をとるまでには至っていないことも明らかになりました。調査結果とともに、セコムIS研究所の研究員・濱田宏彰氏の分析とコメントもご紹介します。
水害に対する危機意識が5年前より高まった人は9割以上
まず初めに、最近、どのような災害に不安を感じているかを聞くと、「地震」(80.8%)、「豪雨」(60.4%)、「台風」(59.4%)がトップ3にランクイン。「地震」に対して不安を感じている人は、他の災害よりも20ポイント以上高いことが明らかになりました。
次いで、「台風」「豪雨」「洪水」のいずれかの水害に不安を感じている人に対して、5年前と比較した水害への危機意識について聞くと、「水害への危機意識が高まった」「水害への危機意識がどちらかといえば高まった」と回答した人は計96.8%となり、水害リスクを自分事として捉えている人が増えていることがわかります。
ハザードマップ確認経験者の8割が災害時に「自治体指定の避難場所・避難所に避難」と回答
防災対策をしているか聞いたところ、「防災対策をしている」と回答したのは約4割(42.6%)となり、災害への危機意識が増加している一方で防災対策の実施率は低いことがわかりました。
さらに、「防災対策をしている」と答えた人に、具体的な防災対策の内容について聞くと、「一定量の食料・生活用品の日常的な備蓄(ローリングストック)」(55.9%)、「防災リュック(非常持ち出し袋)の用意」(53.1%)、「ハザードマップで危険エリアや避難場所・避難所を確認」(46.0%)が上位になりました。防災対策として、防災用品アイテムや食料品の備蓄・ストックに加えて、もしもの時の被害や危険度の想定も重要視されていることがわかります。
次に、避難指示が出た場合に避難しようと思う場所を聞いたところ、63.8%が「自治体指定の避難場所・避難所」と回答、次いで「なるべく家にいる」が36.0%でした。ハザードマップを確認したことがある人は81.6%が「自治体指定の避難場所・避難所」に避難すると回答し、全体の63.8%と比べると約18ポイント高い結果となりました。
「自治体指定の避難場所・避難所」を選択しなかった人にその理由を聞くと「他の人と過ごすことに抵抗がある」(42.0%)が最も多く、他の選択肢と比べて約2倍となりました。
ハザードマップを確認しない理由の1位は「過去に見て安全だった気がするから」
防災対策として「ハザードマップで危険エリアや避難場所・避難所を確認」していると答えた人に、確認している項目を聞くと、「自宅付近の避難場所・避難所」(80.6%)、「自宅の災害リスク」(78.6%)が上位となりました。
一方、「自宅からの避難経路」(39.8%)、「自宅周辺や避難経路における災害リスク」(34.7%)まで確認している人は4割を下回り、実際に避難するときのことを考えてハザードマップを確認している人はリスクまで想定できている人は少ないことがわかりました。
次に、ハザードマップを確認したことがある人に実際に避難場所・避難所に行ったことがあるかを聞くと、「自宅付近の避難場所・避難所」に行ったことがあると回答したのは67.1%と7割を下回りました。
さらに、防災対策をしているものの、「ハザードマップで危険エリアや避難場所・避難所を確認」していない人にその理由を聞いたところ、「過去に見て安全だった気がするから」が35.7%で最多でした。
「台風」「豪雨」への不安意識は若年層よりもシニア層が高く、その差は20ポイント
最近不安に感じている災害トップ3として、シニア層(50-60代)・若年層(20-30代)ともに「地震」「豪雨」「台風」がランクインし、いずれにおいてもシニア層のほうが災害への不安意識が高い結果となりました。
また、「台風」はシニア層が66.5%であるのに対し若年層は48.0%、「豪雨」はシニア層が69.5%であるのに対し若年層は48.5%とおよそ20ポイントの大きな開きがあることがわかりました。
続いて、災害が発生した際の情報収集手段を聞いたところ、シニア層は「テレビ」(66.0%)が最も多い一方、若年層では44.5%と20ポイント以上の差がありました。
また、若年層の情報収集手段は「SNS」(48.5%)が最も多く使用されていますが、シニア層で「SNS」と回答した人はわずか18.0%と30ポイントもの大きな差があることがわかりました。
次に、「防災対策をしていない」と答えた若年層にその理由を聞いたところ、「対策のための手続きや準備が面倒だから」「費用がかかるから」と回答した人が約3割で、これはシニア層よりも約10ポイント高くなりました。若年層はシニア層に比べ手間や費用から防災対策を負担に感じる割合が高いという結果になりました。
セコムIS研究所の研究員・濱田宏彰が災害への対策を解説
市街地においても高まる水害リスク
不安に感じている災害では「地震」(80.8%)に次いで、「豪雨」(60.4%)、「台風」(59.4%)が約6割となり、水害への危機意識が5年前よりも高まった人は96.9%にものぼりました。ゲリラ豪雨や記録的な大雨が頻発する昨今の状況から、水害への危機意識が増大していると考えられます。
近年では、河川の水が堤防から溢れ出る「外水氾濫」だけでなく、排水設備の処理能力を超える雨によりマンホールなどから水が溢れる「内水氾濫」のリスクも深刻化しています。付近に河川がない市街地等においても水害が発生することを念頭に対策することが重要です。
各種災害におけるハザードマップの確認を
ハザードマップは「地震」関連だけでなく、「洪水」「内水氾濫」など種類ごとに確認してさまざまな災害リスクを把握しておきましょう。水害においては洪水や浸水リスクの有無、浸水した場合の水の深さも確認してください。避難場所・避難所は災害の種類によって異なる場合もありますので、「地震」や「洪水」などそれぞれの災害時における避難場所・避難所のチェックが必要です。
本調査では、防災対策をしているものの、ハザードマップを確認していない人の理由として「過去に見て安全だった気がするから」(35.7%)が最も多い結果となり、ハザードマップを一度見て安心している人がいることも明らかになりました。現状の災害リスクを把握するためにも、自治体から新しいハザードマップが配布された時や防災の日など、1年に1回は確認する習慣をつけていただきたいと思います。
セコムIS研究所 リスクマネジメントグループ 研究員・濱田宏彰
シニアリスクコンサルタント/防犯設備士/防災士/日本市民安全学会常任理事
■調査概要
実施時期:2023年7月28日(金)~7月31日(月)
調査手法:インターネット調査
調査対象:全国の20歳以上、70歳未満の男女500人
調査機関:セコム株式会社調べ【実務委託先:楽天インサイト(2023年7月)】
※構成比(%)は小数第2位以下を四捨五入しているため、合計が100%にならない場合があります
セコム防犯・防災ブログ https://www.secom.co.jp/homesecurity/bouhan/
文/ふじのあやこ