取材・文/ふじのあやこ
一緒にいるときはその存在が当たり前で、家族がいることのありがたみを感じることは少ない。子の独立、死別、両親の離婚など、別々に暮らすようになってから、一緒に暮らせなくなってからわかる、家族のこと。過去と今の関係性の変化を当事者に語ってもらう。
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発達障害グレーゾーンの困りごとを大人に持ち越さないことを目指すリサーチ機関「パステル総研」は、祖父母との関係を解析するアンケート調査(実施日:2024年8月16日~8月18日、有効回答数:107人、インターネット調査)を実施。祖父母との関係の困りごとについて聞くと、1位は「祖父母が子どもの特性を理解しない」(49.4%)、2位は「祖父母が子どもを否定する」(43.2%)、3位は「祖父母が母親の育児・しつけが悪いと言う」(30.9%)となっている。これらの困りごとがあった相手は誰なのかという問いに対しては、「母方の祖母」が64%と、ダントツの1位という結果になっている。
今回お話を伺った由衣さん(仮名・43歳)は、親から何度も同じことで怒られることが多く、中学生の頃には勉強についていけなくなる。そのことがきっかけで母親や兄から疎まれるようになったという。【~その1~はこちら】
兄嫁よりも先に妊娠し、「初めて勝った」と思った
大学卒業後は就職活動がうまくいかず、友人の紹介からデザイン事務所でアルバイトを始める。当時流行っていたマンガの影響でデザインに興味があった由衣さんは、独学でデザインソフトを使いこなすなど、知識があった。アルバイトではイチからデザインを担当させてもらうことはなく、修正のみ。ミスをする由衣さんに根気よく付き合ってくれたのが、今の夫だった。
「簡単な作業だったので、作業のミスは少なかったんです。でも、色んなものを頼まれると優先順位がわからない、修正を書いた紙を失くすなどのミスを繰り返してしまって……。修正は複数の担当者の方から別々に次々と持って来られていたのですが、いつの間にか窓口が1人になり、その1人が夫でした。
夫は絵に描いたようないい人で、周囲からの頼みを断れずに私への窓口の担当にさせられていたんだと思います。でも、夫は今まで一緒にいて、私のことを一度もきつく怒ったりせず、大きなため息もつきません。今はフリーでプログラミングの仕事をしているのですが、それも夫が窓口になってくれています」
由衣さんは8歳上の夫と、25歳のときに結婚した。結婚と同時に由衣さんは職場をやめて、フリーになる。
「仕事はアルバイトで入っていて、その後契約社員になったのですが、お給料が少なくて、夫と結婚前に同棲するまでは実家で暮らしていたんです。社会人になってからは、家で親と顔を合わせば少し会話はするけれど、お互い干渉し合わない関係になっていました。そして実家を出た後は、お正月などの帰省もしないようになっていました。
結婚のときは夫と2人で私の実家へ挨拶に行きましたが、夫はバツイチで、私にはあまり友人がいないということもあって、結婚式の写真だけ撮っただけで終わりました。義両親はすでに亡くなっていたので、夫の弟には私たち夫婦だけで挨拶を行いました」
結婚してすぐに妊娠が発覚し、その後に女の子を出産する。由衣さんの両親は結婚よりも子どもができたことを喜んだという。
「私が知らない間に母親と兄の関係も悪くなっていて、兄は結婚してから実家に寄りつかなくなっていました。私が妊娠したときに、兄のほうはまだ子どもがいなかったんです。母親は孫ができたことをとても喜んでいたので、私は初めて兄に勝ったような気持ちになりました」
【親は娘の発達障害を認めなかった。次ページに続きます】