取材・文/ふじのあやこ
一緒にいるときはその存在が当たり前で、家族がいることのありがたみを感じることは少ない。子の独立、死別、両親の離婚など、別々に暮らすようになってから、一緒に暮らせなくなってからわかる、家族のこと。過去と今の関係性の変化を当事者に語ってもらう。
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発達障害グレーゾーンの困りごとを大人に持ち越さないことを目指すリサーチ機関「パステル総研」は、祖父母との関係を解析するアンケート調査(実施日:2024年8月16日~8月18日、有効回答数:107人、インターネット調査)を実施。祖父母との関係の困りごとについて聞くと、1位は「祖父母が子どもの特性を理解しない」(49.4%)、2位は「祖父母が子どもを否定する」(43.2%)、3位は「祖父母が母親の育児・しつけが悪いと言う」(30.9%)となっている。これらの困りごとがあった相手は誰なのかという問いに対しては、「母方の祖母」が64%と、ダントツの1位という結果になっている。
今回お話を伺った由衣さん(仮名・43歳)は大人になってから発達障害の診断を受けている。小さい頃から親には怒られることが多く、自身が母親になった後も自分の子どもを通して罵倒されることがあったという。
何で怒られているのか、わからないことが多かった
由衣さんは両親との2歳上に兄のいる4人家族。兄は勉強ができて、物静かな性格。一方の由衣さんは勉強が得意ではなく、じっとしていることも苦手でおしゃべり好きだった。小さい頃は由衣さんのほうが兄より“子どもらしい”という理由で親戚からは可愛がられていたという。
「親族の中で私が一番年齢が下だったんです。だから大人たちから何をしても可愛がられていた記憶があります。私も周囲が私の話に耳を傾けてくれるから、どんどん話したくなって、止まらなくなっていました。兄は部屋の隅で、1人でポケットゲームなどをしていることが多かったので、大人たちは私にばかり優しくしてくれていたんです。主人公になれたような気持ちになれる、その空間が私は大好きでした」
他の大人たちがいる空間が好きだった理由はもう1つあった。母親は兄ばかりを褒めて、由衣さんには怒ることが多かったのだ。何度注意されても直らない由衣さんに対して、母親は「お兄ちゃんはそんなことしないのに」といつも比べて溜め息をついていたと振り返る。
「近くに他所の大人がいれば、母親は私のことを怒らずに優しく注意してくれるのですが、家という周囲の目が一切ないところに行くと、母親は怒りをぶつけてきました。私は何で怒られているのかわからないときもあったのですが、それを聞くとさらに母親の怒りを買ってしまうことがあったので、ひたすら我慢したり、謝ったりしていました。怒った後には、母親はうんざりするような顔でお兄ちゃんと比べる言葉を吐きながら、大きなため息をついていましたね」
学生時代には一部の友だちから嫌がらせを受けることもあったが、それでも仲良くしてくれた友人はいた。周囲との違いを感じ、「一番つらかったのは中学生」という。担任の先生からの言葉がきっかけで家での生活はさらに苦しいものになった。
「三者面談で私の勉強の遅れを親の前で担任から指摘されたんです。母親はその場では難しい顔をしていただけだったんですけど、その後には家で勉強する時間を作られ、塾にも通わされるようになりました。その塾は先生が怖くて、みんな静かで仲良くできる子が一人もいなくて、すごく居心地が悪かったことを覚えています」
【家に居たくないと、深夜勤務のアルバイトをしていた。次ページに続きます】