「結婚は2人でも楽しいと思える相手としてほしい」
しばらくは離れて暮らすために希美さんは実家に戻ることに。実家に帰るといつも通り母親に質問攻めにされ、そこで母親から昔話をされたという。
「母親は私の前に二度、子どもを流産していました。たくさん傷ついて、もう子どもは諦めようという話になったことがあると。『子どもができなくても、相手がお父さんだったから2人でも楽しいと思えた』と話し、『あなたは?』と聞かれました。私は当然のように結婚したら子どもを産むものだと思っていました。そのための結婚とさえ思っていたのかもしれません。その話を母親から聞いた直後は、子どもがいないことが確定していても相手と一緒にいたいというより、そのことが原因で別れたくない。その気持ちしかありませんでした」
その後、2人はまた話し合い、しばらくそのまま同棲を続けることに。同棲を続ける中で希美さんの両親と交流するようになった。そんな中で意外な2人が仲良くなっていき、それが結婚のきっかけになったという。
「父と夫が仲良くなったんです。父は私には全然連絡をしてこないのに、夫には頻繁に連絡をしていて、2人で飲みに行く関係になりました。そのうちに両親と私たちの4人で食事をするときには、お酒が入っていたせいもあって、結婚前なのに夫のことを息子と呼ぶようになったんです。その息子呼びが夫の中で特別にうれしいことだったみたいで、『家族になりたいです』と夫からプロポーズを受けました」
結婚して子どもを望む人も多いが、結婚が子どもを産むための手段になっているなら、子どもができなかったときにはその結婚は後悔してしまうだろう。子どもが欲しいことは間違いではないが、相手と一緒に幸せになるために結婚を選ぶほうがより幸せになれるのではないだろうか。
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。