祖母と同じ病気に罹った伯母の存在がきっかけに
親は老いについての言葉を口にするもそれだけで、終活について子どもの亜美さんのほうから勧めることもできなかった。そんな膠着状態がしばらく続いたが、実家に帰省したときに亜美さんは母親が書いたエンディングノートを見つけたことで状況は一転する。
「居間のテーブルの隅に母親の好きなお菓子などが詰められたボックスがあるんですが、そこにB5サイズのノートが入っていました。それは花柄のかわいいノートで、私は間違って入れてしまったんだなと思ってそこからノートを出したときに少し中を見てしまって。最初のページに英語で“Ending memo”と書いてありました」
“Ending memo”の文字を見て、それ以上の内容は見れなかった。このノートを用意しているということは、母親は体のどこかが悪いのかもしれないと、見て見ぬふりはできずに亜美さんは母親を問いただしてしまったそう。
「母親はノートを片手に慌てる私の姿を見て、笑いながら病気については否定してきました。でも、母の姉、私の伯母に病気が発覚して、その病気で祖母を亡くしていることから自分も何かあったときのために準備しておこうと思ったと伝えてくれました」
このノートをきっかけに、亜美さんは親の終活についての話ができるようになったという。亜美さんの小さい頃の思い出の品は母親と話しながら必要ではないものは一緒に処分をして、スーツやブランドのカバンなどは少しずつリサイクルに出しているとのこと。終活を親としているかたちにはなっているが、亜美さんはまだ親を看取る覚悟はできていないそう。しかし、「親に一人で準備をさせるのではなく、一緒に準備をしていることも親孝行なんだ」と思うことができてきたという。“終活”という言葉は、死を迎えるための準備と捉える人も多いが、残りの人生を豊かにするための準備だと前向きに捉えることも必要だろう。
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。
