子供が中学生になった、40代前半に起こった変化
光昭さんは神奈川県横浜市で生まれ育ち、県立高校から都内の名門大学に進学する。
光昭さんは、妻とは「しなかった」。
「子供もいるし、家族になると“母”という感じがして、する気が起きない。それにブクブク太った妻とするというのは無理な話。妻が40代前半に、妙に色気づいて、変な下着をつけて私のベッドに入ってきたことがあり、気持ち悪かった。それを言ったら『女としてどうなの?』と聞かれたけれど、女としてどうこうではなく、すでに母であり夫婦なんだから、そういうこととは距離を置きたい。そんなことが何度かあったかな」
最後に夫婦関係を持ったのは、35歳のとき。以降、28年間はしていない。
「こんなことを言うのは、自分でもどうかと思うけれど、やはり女性を求める欲望が強い人は、知性と情が弱いと感じる。今、多くのタレントが女性問題で身を滅ぼしているけれど、あれも人望があったらあそこまで叩かれないと思うんだよね。男は男に甘いから」
夫としての営みは放棄した。妻は、おそらく浮気を繰り返してきた。
「いちばん、ショックだったのは、本八幡にある実家に帰るといって外出していたこと。あまりの頻度におかしいと思って、恥ずかしい話、妻の後をつけたら、東京駅から茨城方面行きの高速バスに乗った。その日は夜遅くに帰ってきた」
おかしいと思った光昭さんは、探偵に依頼する。
「報告書を見たら、びっくりしたよ。妻が豪華な一戸建てに入っていき、風采が上がらない男と夫婦然として、スーパーで買い物をしている。マスクをしていたけれど、笑顔だということがわかる。牛肉やワインなどを買って、手をつないで帰っていった。帰りは男がクルマでウチの近所まで妻を送ってきて、マンションの前に停めた車の中で、いつまでもキスしているんだよ」
報告書を見せていただいたが、車内のあられもない様子まで、撮影されていた。
「息が止まって、全身の血が抜けた。衝撃的だった。相手は高校の同級生で、不動産会社を経営している大金持ち。この男は妻と死別し、子供はいないという。報告書をもらった夜、妻の体に触れようとすると、『やめてよ、いまさら』と笑って避けられた。こんなもののために100万円を支払って、俺は何がしたかったのかと思う」
離婚も考えたけれど、浮気していることを除けば、妻は完璧だ。また、妻がいなければ、光昭さんの生活は回らない。
「家事のみならず、金の管理も全部妻がしている。そのほうがラクだったから。これは、見なかったことにした方がいいんだろうと思うけれど、そういうことでもない。これを相談できる奴もいない。人生の最後の近くになって、こんなことが待っていると思わなかった」
報告書を隠そうと思い、クローゼットの奥を見たら、数枚の派手な下着が隠してあったという。
「劣化の状況を見ると、10年以上前のものだと思う。おそらく、妻も隠したことを忘れているだろうから、一緒に入れておいた。いつ、妻がそれを見つけるか。その日に備えて、私も気持ちを整理しておこうかと思っているんだ」
取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)がある。連載に、 教育雑誌『みんなの教育技術』(小学館)、Webサイト『現代ビジネス』(講談社)、『Domani.jp』(小学館)などがある。『女性セブン』(小学館)などに寄稿している。